<話題のひろば>

今、ホットな憲法問題で、集会に参加した人から寄せられた感想と報告を紹介します。

2005年11月3日神戸市勤労会館において、兵庫県憲法集会が開催された。
講師は、神戸大学発達科学部の二宮厚美教授。演題は「いま憲法を守ることがマニフェストの時代」で、そのキーワードは「バターか大砲か」であるとして、わかりやすく講演された。会場は立ち見の出る満席であった。
講演の後、憲法問題訴訟報告として、(1)中国残留孤児訴訟の結果報告と(2)原爆訴訟に臨む準備と意気込みがそれぞれの担当弁護士からあった。
レゲエのバンド演奏と阪神地区の九条の会の自己紹介がにぎやかに行われ、解散後、三の宮マルイ前で街頭活動と多彩な集会だった。

参加しての感想:

兵庫県憲法集会での二宮教授の講演要旨:

自民党改憲草案は、前文の無力化と第九条の形骸化および第25条の画餅化を謀るもので、その動機は財界の利益の確保である。
多国籍企業化により海外生産が急増しその利益は莫大な額となっているが、それゆえに生産拠点および関連する流通ルートの防衛と維持のために即応できる軍事力が必要との思いにかられている。その眼前に立ちはだかっているのが9条であり、彼らには取り除くべき「邪魔な物」となっている。
海外生産で得た利益を国内の福祉等の民生費用として分配する事は利益第一主義の観点からは不合理な「荷物」に見え、国民の生存権は排除すべきものとなる。
このため財源健全主義のもとで「小さな政府」のスローガンを掲げて自治体財政を一般財源主義(自主財源主義)へ移行し、弱いもの同士で支えあわさせることで、財界の税負担を削減して利益を最大化する政策が推し進められている。
これを実行させるため、愛国心と新国家イデオロギーの徹底をはかる条項も改憲の対象としている。これは国民主権への挑戦であり、その否定である。
米国主導のグローバリゼーションと新自由主義経済が、ドル流通圏の拡大と利益獲得の障害を暴力的に排除しているが、これを効果的なものにするための軍事力強化が政府の基調となっている。米国政府は集団的自衛権行使を前提に、日本に先制攻撃への即応体制を可能とする改憲の圧力をかけ続けているが、これは財界の本音と矛盾するものではない。
自衛隊を軍隊に転換して、米国の僕(しもべ)の軍隊として海外で交戦することになれば、その経済的負担は国民生活を圧迫し、この面でも生存権の保障は困難になる。
いま平和憲法は、新自由主義市場経済の横暴と戦争に踏み出そうとする道に、立ちふさがっている。世界史的産物である平和憲法の平和と福祉は、世界が最小限守らなくてはならない共通の道理である。この憲法を平和と福祉に生かす道こそ、平和憲法を守り抜く道である。
平和憲法の前文・第9条・第25条は一体の有機体として、21世紀版の「大砲かバターか」の選択の危機に立たされている。

(06.02.19)