新しい日本の幕開け
新年あけましておめでとうございます。
今年は、国民の暮らしがきわめて深刻な状況のもとでの年明けとなりました。
川崎重工や関連企業で働く労働者とご家族のみなさんも、先行きに不安を持って年を越された方も多かったのではないでしょうか。
なぜこれほどまでに日本の景気が深刻になったのでしょうか。
発端となったアメリカ発の金融危機は、「カジノ資本主義」(ばくち経済)の破綻でしたが、それが日本の景気悪化を一気に加速させた根本には、極端な"外需=輸出だのみ"という日本経済のぜい弱性があります。そして内需低迷の大きな要因の一つに、低賃金の非正規雇用を拡大させてきたことがあります。
昨年暮れから、これまで非正規雇用で莫大な利益を上げてきたトヨタやキャノンなどの大企業が、景気悪化を理由に、競い合って大規模な労働者の「首切り」「雇い止め」をすすめています。
この「非正規切り」は、職を失った社員を真冬の路上に放り出すものであり、人道に照らして決して許されるものでありません。まして、契約途中の解雇は法令違反です。大企業は昨年4月以降の半年で29兆円(正社員年収550万人分)も溜め込んでおり、雇用を維持する体力は十分持っています。横暴極まる大量解雇は、日本経済を雇用破壊と景気悪化の悪循環に突き落とすことになります。
わたしたちは、大企業が大量解雇をただちに中止・撤回し、雇用を守る社会的責任を果たすよう強く要求します。
そもそも、違法解雇を横行させている大きな原因に、1990年代後半から労働法制の規制緩和があります。「非正規切り」のしくみをつくった政治に責任があり、これは"政治災害"です。今最も求められる景気対策は雇用確保で、政府が責任もって大企業の大量解雇をやめさせる指導・監督をやるべきです。フランスやスペインでは、政府が「解雇するな」と乗り出し撤回させています。
この間、大きな動きとして労働者の社会的反撃が始まっていることです。いすゞ自動車や日産ディーゼル、大分キャノン、マツダなどで、首切り対象とされた労働者が泣き寝入りせず、憲法28条に保障された労働者の三つの権利―団結権、団体交渉権、団体行動権を行使して、勇気を持って立ち上がりつつあります。そして部分的ですが、雇い止めをやめさせるなどの成果も勝ち取りつつあります。ここには、日本の大きな未来がしめされているのではないでしょうか。わたしたちは、固く連帯してたたかうことを表明するものであります。
川崎重工でも、この10年の間に正規従業員を大幅に削減し、代わりに低賃金の非正規労働者を大規模に増やしてきました。その中で、連結経常利益は右肩上がりとなり、2007年度には639億円という過去最高を更新しました。
その一方で職場は様変わりしました。職場のチームワークづくりや技術の伝承が難しくなり、なれない作業環境での労働災害も頻発しています。削減された正社員は、成果主義賃金のもとで「サービス残業」や長時間過密労働を強いられ、メンタルヘルス障害などで長期に会社を休む労働者も増えてきています。また、賃金制度の改悪により、とくに高齢者のエルダー層では極端に賃金が下がるために退職を余儀なくされる労働者も出ています。
さらに景気の悪化を理由に、川崎重工でも「非正規切り」を計画しています。先の中央経営協議会において、2008年度の連結経常利益は当初計画どおり550億円と発表しており、雇用を維持する体力は十分持っています。労働者に一方的に犠牲転嫁する安易な操業短縮や「非正規切り」は許されません。このようなときこそ、非正規雇用を正社員に登用して大企業としての社会的責任を果たすべきです。
ルールを無視して人間を粗末にするような企業は、決してよいものはつくれませんし、長期的には業績も向上できません。
川崎重工に働く労働者のみなさん、「人間らしく働けるルール」の確立で、一人ひとりの労働者の人権が尊重され、健康で安全が守られる職場づくりを目指し、ともにたたかいましょう。
昨年、アメリカ大統領選挙でオバマ上院議員が「CHANGE」を掲げて、初の黒人大統領に選ばれました。今年は自公政治に怒りの審判をくだす総選挙の年です。今度の選挙では、ゆきづまった自民党政治に代わる「政治の中身」が問われることになります。大企業からモノを言われる政党ではなく、大企業にモノが言える政党をのばし、「国民が主人公」の新しい日本をともにつくりましょう。
最後にみなさんがご家族ともどもこの1年を健康に過ごされることを祈念して新年のご挨拶といたします。
(09.01.01)