2013年春、大幅賃上げの要求を!!

1.はじめに

 会社は全組合員への賃上げを4年前の2008年に1人平均2,000円を最後に実施していません。今年のAP12春季でも1人平均3,000円増額要求に対して、「『賃金増額は会社の国際競争力を削ぐ』、『会社業績は年間一時金で従業員に還元している』」(川重労組ニュース第1682号)と従来の主張を繰り返し、ゼロ回答でした。
図1:2011年要求アンケート抜粋

 私たちが昨年実施した"「人間らしい労働と生活」実現の要求アンケート"(以降、アンケート)では1万円以上の賃上げ回答が9割以上ありました(図1)。これは長年に渡って低賃金を強いられた反映であり、決して年間一時金で還元されていない実態を表したものと考えます。

 経済問題の著名な山家悠紀夫氏は、「一番の問題は、大企業の手元に膨大な資金がたまっていて、動かないことです。・・・大企業にたまっているお金を解放していく。賃金をもっと払わせる、税金をもっと取る、中小企業との取引条件を改善させる。大企業にたまったお金を働く人や中小企業に分配すれば、購買力が増え、経済全体がよくなり税収も増えるという好循環が生まれます。」(「しんぶん赤旗」2012年1月24日インタビュー記事)と、大企業がかかえる260兆円を超える内部留保を賃金、雇用、税収、等に積極的に活用することを訴えています。 また、欧米では雇用や成長を犠牲にした緊縮政策を批判し、富裕層に負担を求める動きが強まっています。

 時代は大企業の国際競争力の強化によって経済危機脱出の道でなく、大企業や富裕層の応分の負担、巨額の内部留保の活用によって、日本経済を内需主導の健全な発展にのせることを求めているのです。

 経済再建と発展の一つである労働者の賃上げ、川崎重工の財務状況はこの要求に応えることができるのでしょうか?有価証券報告書のデータから考察しました。

2.考察1:連結内部留保、月3万円の大幅賃上げは留保額の3%

 図2は2005年から2011年の有価証券報告書から連結内部留保についてまとめたものです
図2:連結内部留保

 連結内部留保は2008年秋のリーマンショックの影響を受けた2009年を除いて毎年留保額を増やし、2011年には3,524億円となりました。また、一人当たり連結内部留保は2007年に1千万円を突破しています。
 
 アンケートでもっとも多かった賃上げ月3万円を全ての連結従業員に実施した場合、2011年に必要な資金は年間120億円(3万円×12ヶ月×33,267人)程度です。これは同年の連結内部留保3,524億円のわずか3%です。




3.考察2:連結換金性資産、月3万円の大幅賃上げは資産の21%程度の活用で可能

 日本経団連は「内部留保は生産設備などに使われており、現金に換えることはほとんど不可能」と反論して内部留保活用論を否定しています。
図3:連結換金性資産
 たしかに内部留保はさまざまな資産に形を変えており、3,524億円全てが現金あるいは換金性の高い資産として留保されていません。しかし、活用資産が全くゼロではありません。現金・貯金、有価証券、等の換金性の高い資産があり、短期的にはこれらの資産を活用していけばいいと考えます。
 
  図3は連結換金性資産についてまとめたものです。換金性資産とは現金・貯金、投資目的の有価証券等、文字通り換金性が高く、即効的に使用可能な資産を言います。
 2011年現在の連結換金性資産の合計は576億円、一人当たり173万円です。
  さて、月額3万円の賃上げですが、2011年連結換金性資産576億円の21%程度の活用で可能です。

4.考察3:連結当期純利益、月3万円の大幅賃上げは可能

図4:連結当期純利益
 最後に、連結当期純利益について考えてみます(図4)。
 当期純利益はその期に企業が得た最終的な利益で、この利益が株主の配当に使われ、残りが企業の内部に留保されます。
 
 2011年連結当期純利益は233億円です。月額3万円の賃上げは51%の活用で可能です。
 また、月3万円の賃上げは2011年だけでなく、2009年を除いて全ての年で連結当期純利益だけでも可能だったことを物語っています。

5.おわりに-大幅賃上げの要求をしていきましょう 

 川崎重工の財務状況を内部留保の活用、年度毎の純利益から考察しました。その結論は月3万円の大幅賃上げが十分可能な体力があるということです。
 皆さん、私たちは"大幅賃上げ"の要求を2つの面から大切で正当な要求だと考えます。一つは生活実態からくる切実な要求であること、そして二つ目は大幅賃上げが日本経済を内需主導の好循環を生みだす源泉となる、時代の要請に応える要求であるということです。

 皆さん、2013年春闘は職場から大幅賃上げの要求をしていきましょう。!!

(12.11.03)