昨年11月26日の神戸新聞によると、川崎重工は元従業員2600人を対象に、無料のアスベスト(石綿)検診を行うことを明らかにしています。理由は潜伏期間の長さを踏まえ、「不安を取り除くのが狙い」とのことです。対象は子会社の川崎造船(神戸市)、川崎プレシジョンマシナリ(神戸市)、を含む3社で、グループ会社の元従業員については、問い合わせがあれば相談に応じると伝えています。
 検診は、各事業所の診療所や指定病院で問診と胸部X線撮影を実施し、必要あればコンピューター断層撮影(CT)検査も実施するとしており、費用は全額会社負担、石綿関連疾病が見つかれば、労災申請の手続きも支援すると述べています。

 続く11月30日の神戸新聞では、川崎重工の元社員4人と関連会社の従業員1人の合計5人が労災申請したと伝えています。
 5人の元社員と関連会社の従業員は、川崎重工の造船や車両製造部門でアスベスト(石綿)を吸引し、肺がんや中皮種になったとして、神戸市内の2労働基準監督署に労災申請をしました。川崎重工の元従業員は神戸、三木市に住み2003年〜2004年に肺がんなどで相次ぎ亡くなっています。下請け会社の元従業員(54歳)=明石市は現在中皮種で入院中です。被災者支援団体「ひょうご労働安全衛生センター」が労災申請に協力し、申請後遺族たちは神戸市内で会見しました。

(2005年12月14日 神戸新聞)

夫(62歳)を亡くした妻は「夫はタバコも吸わず、肺がんは最も縁遠い病気だった。なぜ、亡くなったのか明らかにし、夫に報告したい」と涙を浮かべて訴えていました。会見の中で、川崎重工の労災手続きが遅れたため、補償の一部が時効を招いたケースについて報告があり、「ひょうご労働安全衛生センター」の神田雅之代表は「川重は石綿を使用した企業として責任を持ってもらいたい」と強く語っています。

 川崎重工の一部工場では、従業員を対象に健康調査を実施していますが、全従業員を対象にした調査や、健康診断などはいまだに実施していません。危険と知りながら長年にわたってアスベストを使い続けてきた企業の責任は重大です。川重は一刻も早く従業員や元従業員の健康調査と、調査結果の開示をすべきです。

(06.01.22)