平衡取らず無謀作業

川崎造船クレーン倒壊事故

 3人が死亡、4人が重軽傷を負った川崎造船神戸工場のクレーン倒壊事故(8月25日)。現在兵庫県警が業務上過失致死傷容疑で調査中です。(兵庫県・秋定則之)

過密工程を最優先 安全軽視浮き彫りに


 倒壊したクレーンは、主軸や機械室、アームなどが基礎部分に差し込まれた構造(図参照)です。アームに荷物をつるす際、アームの反対側の機械室に重りをつけ、「やじろべえ」のようにバランスを取ります。アームに何もつっていない状態では機械室側の方が重く、主軸をベアリング部分で支えていました。
 今回、破損したベアリングを交換しようとして主軸をジャッキで持ち上げたとたんに主軸の位置がずれ、クレーンは機械室側に倒れて大事故に。通常、主軸を持ち上げるときは、アームの先に重りをつるすなど「何らかの形で平衡を取る」(同クレーンのメーカー、住友重機械工業の広報室)ものです。関係者によると今回はこうした措置はとっておらず、「あまりにも無謀だ」という声があがっています。

拙速な交換工事

 このベアリング交換は、500トンの同クレーン(基礎部分以上)を持ち上げて1個2トンのベアリングを換えるという、危険な大工事。通常なら綿密な計画を立てておこなうものとされています。
 また、同工場では「安全衛生管理要綱」で、重大災害防止のために、クレーンの修理などの「非定常工事」や新規工事にたいし事前検証することを決めています。ところが今回は事前検証をした形跡もなく、作業計画書すらつくっていませんでした。
 そして、工事はベアリングの破損が発見された翌日に行うという、拙速なものでした。安全軽視は明白です。
 背景には、過剰な建造工程を最優先する会社の姿勢があります。川崎造船は、以前は一隻の船の生産に3ヶ月かけていましたが、それが2.5ヶ月になり、ことし春ごろからは2.15ヶ月に短縮しています。
 事故に遭った人たちはことしの年頭、会社から「クレーン故障の迅速な処置による建造工程維持への貢献」で表彰されていました。作業の迅速さと工程厳守をあおられていたようなものです。こうしたなかで起きた事故でした。
 川崎重工・川崎造船では最近死亡事故が多発しており、今回の事故以外でもこの1年間に3人が亡くなっています。

「安心な職場へ」

 吉井英勝衆院議員、山下芳生参院議員ら日本共産党調査団は8月31日、兵庫労働局にたいし、労働安全衛生法にもとづく「クレーン等安全規則」に照らすと、労基署に届け出が必要な大工事であるにもかかわらず、川崎造船が届け出をしなかったのは重大だと指摘。生産計画と事故との関係も調査するよう求めました。川崎造船は、日本共産党の現地立ち入り調査を拒否しています。
 日本共産党川崎重工神戸支部は、事故原因の解明、無理のない工程などを会社に求めています。
 同支部の山田耕助さん(60)は「職場長が安全管理責任者を兼務しているので、安全より工程が優先されます。また、社員が減って徹夜・休日出勤が増えている。労働者の声を集め、労働組合にも働きかけ、安心して働ける職場にしたい」と語ります。

「しんぶん赤旗」2007.09.13

(07.09.23)