「ある女性の過労自殺」
他人ごとで良いのか?川崎重工にとって・・・
ある女性が母親の愛情を一身に受け、その愛情に応えるために一生懸命学び一流大学へ入学、そして、誰もが羨む大手広告代理店へ就職。
「仕事も人生もとてもつらい。今までありがとう」という最後の言葉を残して、2015年12月25日朝、24歳の生涯を閉じました。
その女性はSNSなどで最後の気力を振り絞って、発信していました。
「休日返上で作った資料をボロくそに言われた。もう体も心もズタズタだ」
「眠りたい以外の感情を失った」
「生きているために働いているのか、働くために生きているのか分からなくなってからが人生」
「土日も出勤しなければならないことがまた決定し、本気で死んでしまいたい」
「毎日次の日が来るのが怖くてねられない」
「道歩いている時に死ぬのにてきしてそうな歩道橋を探しがちになっているのに気づいて今こういう形になってます・・・」
「死にたいと思いながらこんなストレスフルな毎日を乗り越えた先に何が残るんだろうか」
「なんらな死んだほうがよっぽど幸福なんじゃないかとさえ思って。死ぬ前に送る遺書メールのCC(あて先)に誰を入れるのがベストな布陣を考えてた」
発信された内容は、母親に残した言葉に至る前の10月中旬から12月中旬の2ヶ月間に発信されたものです。
4月に入社して6ヶ月間、一生懸命、試用期間を乗り越えてやっとの思いで本採用された10月から、彼女に何があって先のSNSへの発信に至ったのでしょうか?
ここに、69.9時間、69.5時間、69.8時間という時間があります。
この70時間手前の時間を聴いて、何の時間?と疑問に感じます。
答えは、彼女の10月〜12月の残業申請時間です。この会社は、労働基準法36条で労働基準監督署へ届け出ている残業時間の上限値を、70時間として届け出ています。
次に、10月25日(日)午後7時27分始業〜10月28日(水)午前0時42分就業、この間に17分の労働時間の中断はありますが、ほぼ連続して53時間15分という労働時間が記録されています。
ここまで、彼女を追い込んでいったものは何なのでしょうか?
この会社には、「鬼十則」という第4代社長の遺訓があり、社員手帳に掲げられています。
「取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは」という一節があります。
この会社の関係者からは、「管理職世代は特にその影響を受けている」と話しています。
入社1年目で10月から本採用になったばかりの新入社員は、その会社の財産としてまだまだ時間をかけて育成していかなければならない時期です。
それを知っていながら上司は、なぜ「休日返上で作った資料をボロくそ・・・」に言ったのでしょうか?
川崎重工では、日増しに職場でのパワハラ発言に耳を覆う場面が多くなりました。
まともな教育や知識も育成されない状態で、上司から日常的に「何や、この資料は。明日の打合せには使えん。直せ。」と夜遅く言われています。
川崎重工の若い正社員も、「設計関係のビル(神戸工場2号館)では、午前零時を回っても毎日のように明かりがともっています。」(はぐるまNo.228号)に掲載されているように、有言無言のプレッシャーの中で限界を超えようとしています。
ある女性の死、ある会社の非情な働かせ方。
他人ごとで済まされるのでしょうか?
川崎重工の経営者、管理者、労働組合、職場で働く人たちは・・・。
ある女性が勤めた会社であった出来事が、ある女性の自殺と言う悲劇である女性の24年間の人生を終焉させたこと・・・。
ある女性がSNSに残した言葉の一つ一つは、今、川崎重工の各職場で夜遅くまでもがき苦しみながら働いている、全ての労働者に投げ掛けられた言葉ではないでしょうか?
ある職場では、「隣の人がいっぱいいっぱいで働いているのはわかるのだが、自分もいっぱいいっぱいなので何ともしてやれないし、無理難題を押し付けてくる上司もいっぱいいっぱいなのがわかるので無理難題を断れない。皆いっぱいいっぱいで働いているんだ。」という声が聴こえています。
ある女性のお母さんは、「内定をもらう前から長時間労働ではと心配していた。労災認定されても娘は2度と戻ってこない。命より大切な仕事はないのに」と訴えていました。
何のために働くのか?
彼女が語った、「生きているために働いているのか、働くために生きているのか分からなくなってからが人生」と言った言葉に、「どうしたんだい、それははっきりしているよ。『生きるために、自分自身や家族が幸せになるために』働いているんだよ。」という言葉を、やさしく応えてあげられる会社や職場や組合や仲間たちが、居てあげられたら状況は変わっていたとも思われます。
職場で「いっぱいいっぱい」で働いている皆さん。
ある女性やある男性は、今、隣にも・・・。そして、あなた自身でもあります。
「どうしたんだい」という声掛けを、まず始めましょう。
そして、「ひとりで悩んだり、抱え込んだりしないで、皆で何とかしようよ。何とかなるよ。なぜなら、いろんなことがあったけど、何とかなったから皆いま、ここに居るのだから」と話しましょう!
(16.11.27)