格差社会よさらば!
−労働者層における格差の実態と打開策−
1.はじめに
今、格差の問題が福祉、教育、賃金などで大きく現れ、問題化しています。
格差の問題が表面化したのは90年代以降ですが、「小泉改革」で格差容認・拡大の政策が推進された結果、国民生活におけるその害悪はさらに広がり、その後民主党政権になっても解決されていません。
格差社会の問題は国民生活のあるゆる側面で存在しますが、本稿では川重で働く人達を含む労働者層における格差の実態を明らかにし、その打開策を読者と共に探っていこうというものです。
2.労働者層における格差拡大の始まり
労働者層においていつごろから格差の拡大が始まったのか見てみましょう。
財界・大企業の動き | 法律 | |
1986 | 労働者派遣法の制定(16業種に限定) | |
1987 | 裁量労働制の法制化 | |
1993 | 富士通が初めて成果主義賃金を導入 その後大企業を中心に急速に拡大 |
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1995 | 旧・日経連報告 「ラッパ型賃金」と有期雇用の拡大 |
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1996 | 労働者派遣法改悪 派遣可能業種を26に拡大 | |
1999 | 労働者派遣法改悪 ネガティブリスト化で一部を除き全面拡大 | |
2004 | 労働者派遣法改悪 製造業にまで派遣可能に |
これらの財界・大企業の戦略と政府による格差拡大の法制化により、1997年から賃金は右肩下がりのままになると同時に、大企業の利益は上昇し、また労働者の間でも正規と非正規の間、正規の間でも格差が拡大するようになりました。
労働者だけでなく、国民全体としても富裕層と貧困層の間の相対的格差だけでなく絶対的貧困層が拡大し、年収200万円以下の人達がが1000万人を超えたり、生活保護受給者数が2012年3月には、制度始まって以来最多の210万人を記録しています。
このような賃金の低下によって、最低賃金による所得が生活保護を下回るという逆転現象も生じています。
3.川重での格差
川重では今までも職能給の比率を拡大し、職級間の格差を広げてきましたが、2004年には多くの大企業で採用されている成果主義賃金制度として、「TAR−GET」を導入しました。この制度では職級間の賃金格差を以前よりも拡大し、かつR系列では年功による加算がないために職級が上がらない限りずっと賃金は据え置かれたままとなります。また「TAR−GET」では月例賃金だけでなく、一時金も会社の利益に合わせ、その上に職級による差別的配分をすることで、より一層の賃金格差を拡大してきました。
同時に「TAR−GET」は賃金全体を引き下げる役割も果たしています。
上の表は1999年からの年収の推移を示したものです。
「TAR−GET」導入直前の2004年と2010年の年収を比較すると、約1割もの減収になっているのです。
一方で、非正規雇用の人達の格差はより深刻です。賃金だけでなく、正社員であれば受けられる福利厚生制度もなく、雇用そのものが不安定なのです。
こうした、正規雇用でも一部のエリート社員とそれ以外、非正規雇用、の格差を当然視した制度は、1995年に旧日経連が打ち出した雇用戦略に基づくものです。この制度によって、労働者間の競争を煽り、しかも格差の原因は労働者個人の「自己責任」とすることで会社に対する不満から目をそらせるのです。同時にそれは労働者の団結を弱め、労働組合の弱体化につながります。
しかも格差によって労働者は互いの協調よりも個人の利益を追求することで組織としての仕事も弱体化し、ひいてはものづくりの危機をもささやかれるようになりました。
最近会社は「ダイバーシティ」を強調し、雇用や働き方の多様性を認めてはいますが、労働者間の格差そのものを根本的に解決しようとしているわけではありません。
4.格差の打開
ではどうやってこの格差を打開すればいいのでしょうか。
まず、日本全体の課題として、
−男女、中高年、雇用形態などによる賃金差別をなくす。
−低賃金の温床となっている最低賃金を少なくとも1000円以上に引き上げる。
−法律によって正規雇用を基本とし、有期契約は短期のみに限定する。
−欧米並みに時間外賃金の割増率を上げ(時間外50%、休日100%)、長時間働かせるよりも人を雇った方が安く済むように、企業を誘導する。
などが揚げられるでしょう。いずれも法制化する必要があるものです。
また、川重に対しては、
−「TAR−GET」による、職級間の大きな賃金格差を縮小し、労働者間の競争を過激に煽る制度をやめさせる。労働者には責任のない、会社の利益・カンパニー業績による賃金格差を廃止させる。
−エルダー層を理由にした賃下げはやめさせる(多くのエルダー層では仕事の質・量ともに減っていない)。
−長期にわたって働いている派遣労働者は、試験などでふるいにかけることなく、すべて正社員化させる。
以上の改善策を会社側に要求するために、労働者ひとりひとりが声を上げましょう。
また日本全体についても、個別の企業レベルでも、格差の解消のために、国民的な運動として、これらに賛同する労働組合、政党などとともに実現のためにたたかうことが必要です。
日本共産党はこうした格差解消のために労働者・国民と共にたたかいます。
(12.07.28)