電力の固定価格買い取り制度はどうなる
日本の原発がすべて停止してから3回目の夏を迎えました。各電力会社の試算によれば、今年の夏のピーク時余裕はあり、使用制限はしなくても乗り切れるとのこと。これは国民の節電の努力が実ったものと言えるでしょう。
さて、原子力に頼らず、再生可能エネルギーを増やしていく上で欠かせないのが電力の固定価格買い取り制度です。
2009年時点では少なくとも50以上の国々と25以上の州・地域が採用しており、日本でも2009年に各電力会社による太陽光の買い取りが始まったのをきっかけに、2012年に「再生可能エネルギー特別措置法」が施行されました。
しかし買取がその後順調に進んだわけではありません。2013年に北海道電力が太陽光発電所の一部しか買い取れないと発表したのを皮切りに、各電力会社が新規買い取り拒否を表明するに至りました。
何故買取拒否ができるのか?
電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(通称:再生可能エネルギー買取法)第5条には、供給者からの契約申し込みに対する電力買取義務を定めていますが、例外的に電力会社が拒否できる3つの条項が含まれています。そのうちの2番目は「当該電気事業者(注:電力会社のこと)による電気の円滑な供給の確保に支障が生ずるおそれがあるとき」とあります。
電力会社は、「申し込まれた再生エネルギーを全部買い取ったら回線がパンクして電力の安定供給ができなくなる。再生エネルギーの供給量は天候に左右されて不安定だ」と、この条項を理由に新規申し込みを受け付けないという挙に出ました。
しかし折角スタートした買い取り制度を電力会社が拒否したことに対する国民の批判が高まり、拒否は一旦取り下げました。
「再生エネ買取で電力が余る」は本当か
電力会社による試算によれば、今のままで再生エネルギーを買い取ると電力が余るとしていますが、ここには原子力による発電をベースにしている問題があります。
政府も一緒になって原子力に固執する「ベースロード」という前提で計算するために、再生エネを受け入れる余裕が少ないのです。原子力発電は低出力で運転しようとすると不安定になって危険なので、発電量は減らせないという前提です。チェルノブイリ事故はまさに低出力の実験中に起こりました。
ならば福島事故を教訓に原子力発電をやめればいいのですが、政府と電力会社は発電コストが「安い」としてやめようとしません。逆に川内原発1号機を再稼動するなど、国民の声を無視して原発に固執しています。これでは再生可能エネルギーの買取に大きな障害となることは必至です。
法律にも問題が
法律が施行されたときから、買取価格は毎年度ごとに政府が決める仕組みになっています。
当初、太陽光発電の買取価格が風力や地熱よりも高く設定されていたために参入業者が殺到しました。中には悪質なものも含まれ、申請だけして設備を建設する気がないものさえありました。この原因は、買取価格が申請時の年度の価格から変更されないために、後になって建設費が下がったり買取価格が下がると、遅らせて建設したほうが利益が増えることが明らかになったためです。
法律見直しに必要な視点
今年6月、経済産業省は法律の見直しに着手することを発表し、今年中に改正案をまとめる予定です。
その中には悪質業者の排除や、太陽光の異常に高い買取価格の引き下げ、入札制度の導入などが含まれることが考えられます。
しかし欠落しているのは原子力発電に依存する体質からの脱却です。現在の政府のエネルギー政策は2割を超える原子力発電を前提にしています。また原発が停止している間の代替エネルギーも火力優先です。これに手をつけずにあれこれ制度を手直ししても根本的には解決しません。また地球温暖化の促進のためにも脱原発、再生可能エネルギーのよりいっそうの拡充が必要です。
政府・電力会社は川内原発1号機の再稼動を強行し、その後も次々と再稼動に向けて動いています。
原発再稼動反対の声が国民の多数を占めているにも関わらず、ひたすら前のめりになって世界の流れに逆行する安倍政権は、平和の問題のみならずエネルギーについても反国民的な動きをしています。こんな政権は退陣してもらうしかありません。
(15.08.20)