5.アメリカ発の世界金融危機の意味するもの
今回の世界金融危機は、20世紀型資本主義の克服を促しただけでなく、この激しい土台の動揺はその上に立つ思想や社会的な心情などにも大きな影響を及ぼしています。
まず、資本主義は未来永劫磐石だと思っていた人々の間に「資本主義は限界か?」という疑問を投げかけました。人は、数十兆ドルもの投機マネーが暴走するカジノ資本主義を目の前にしては、資本主義の限界を感ぜざるを得ません。これまで、地球を滅ぼすような温暖化問題を、利益を上げることを至上命令とする資本主義の下で解決できるかどうかが問われてきましたが、今回あらたに、100兆ドルもの余剰資金が利益を上げることを至上命令とする資本、すなわち投機マネーであることが問われることになりました。まさに、マルクスのいう「資本主義的生産の真の制限は資本そのものである」という状況に直面しているわけです。
こうした中で、社会主義ルネッサンスと言われるように、科学的社会主義に対する関心が高まり、マルクスの資本論が世界各地で読まれるようになりました。
また、小林多喜二の「蟹工船」が飛ぶように売れているようですが、読者は、ばらばらにされ、おとしめられて奴隷労働のように働かされる労働者が、闘う中で人間的な連帯や仲間意識、人間的誇りを取り戻す過程に共感を覚えているのではないでしょうか。「派遣切り」にあった労働者があちこちでユニオンに参加して闘いに立ち上がっていますが、この中に日本の労働運動の再生のエネルギーがあるように思われます。
さらに、弱肉強食の新自由主義と貧困化の下で、ばらばらに分断され、ささくれ立った、ぎすぎすした人間関係の現代社会へのアンチテーゼとして、最近、より人間的で暖かいもの、より真っ当なものへの関心が強まっているようです。アメリカのアカデミー賞で納棺師の生と死をめぐる人間的な物語を描いた「おくりびと」が外国映画賞に、暖かいタッチの鉛筆画で亡くなった家族との交流を描いた「つみきのいえ」が短編アニメーション賞を受賞しました。これは一つの象徴的な出来事と言えそうです。こうした傾向は、すこし大げさに言えば、社会的な価値観の転換、あるいは人間復興を目指す21世紀ルネッサンスともいえそうです。
島崎藤村の小説に幕末から明治維新にかけての中仙道の宿場馬籠の庄屋の青山半蔵の生涯を描いた「夜明け前」という小説がありますが、現在は夜がしらじらと明け始める21世紀の夜明け前かもしれません。
日本の国民は今回の不況の中で大変苦しい状況におかれています。しかし、いずれ行われる国政選挙で、現在の自公政府の外需頼みで大企業本位の新自由主義的な構造改革路線と自主性のないアメリカ言いなりの外交路線を改め、社会保障を充実させ、第一次産業や中小企業を手厚く保護し、労働者の所得を増やして内需を拡大する経済政策と、憲法第九条を掲げ自主的で民主的な外交路線をとる政治を実現するきっかけを作ることができるならば、日本の未来は明るいと言えます。
日本の政治をチェンジ(変革)しませんか! Yes we can!