いま、なぜ女性差別撤廃条約か
採択から30年、遅れている日本政府の取り組み
1.女性差別撤廃条約とは?
国連で女性差別撤廃条約(正式名:女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約)が採択されたのは1979年、日本では1985年に批准されました。2009年の今年は30周年にあたります。
条約では、あらゆる分野における男女平等を達成するための必要な措置を取ることを定めています。また条約では法律上だけでなく、事実上、慣行上の差別も撤廃すべきものとしています。
これを受けて、日本政府は「男女雇用機会均等法」の成立、国籍法を改正して父母両系主義に、「育児介護休業法」などを成立させました。
2.世界から大きく遅れている日本の現状
しかしながら、女性差別を撤廃する政府の取り組みは極めて遅れていると判断せざるを得ません。
最も目立つのは男女の賃金格差です。正規労働者で女性は男性の6割台、非正規も含めると5割になります。しかもコース別雇用制度によって女性の多くが「総合職」よりも賃金が低い「一般職」に押し込められるので格差は固定化されます。今年6月のILO98回総会への報告によれば、日本の女性の賃金は男性の66.6.%、すなわち格差は33.4%です。EU平均が15.9%、アメリカ22.4%、アフリカのマダガスカル26.1%と比べても非常に大きい数字です。
管理職に占める女性の割合は、多くの国が3〜5割なのに日本は8.8%、そして妊娠・出産で退職する人が7割もいます。
そして遅れている大きな問題点として、条約に付属する「選択議定書」の批准を日本政府が拒んでいることです。これは権利侵害を受けたとする個人や集団が直接国連に通報できるもので、既に96カ国が批准しています。しかし日本政府は「司法の独立を侵す恐れがある」として消極的です。これに対して女性たちは「法的拘束力はなく、司法の独立を侵すものではない」と反論しています。
3.遅れている原因
このように世界からも突出して遅れている原因は2つあります。
ひとつは財界・大企業の利益最優先の立場です。女性を安く使いたい、出産や子育てをする女性は足手まといになるからいらないという発想です。
もうひとつは前近代的考え方に基づく、男尊女卑だった戦前の軍国主義復活をねらう「靖国派」が政界に深く食い込んでいること、「男女の役割分担」を固定化する思想が社会に根強くあることです。
これらは一日も早く克服することが必要です。
4.女性の声が届く社会を
今年6月29日に東京地裁が、「原告らは違法な男女差別を受けた」として昭和シエル石油へ慰謝料4945万円を原告女性12人に支払うよう命じました。女性は昇級試験を受けさせてももらえず、賃金差別を受けている事実。昔の賃金制度では、補助として位置づけられたままで、職級も据え置かれ、大卒の男性が2・3年もしたら追い抜いていく現実。学歴差別と男女差別の複合体でした。
男女同一労働同一賃金というのが判決の意義です。
女性が「違法である」と声をあげ、裁判で闘わなければ是正されないという現実があります。
5.女性差別撤廃の運動を!
以上のような日本政府の取り組みの遅れについて、再びクローズアップされる出来事がありました。以下は7月25日付「しんぶん赤旗」の記事の一部です。
女性差別撤廃条約をめぐり、国連の女性差別撤廃委員会は23日、国連本部で日本政府の条約実施状況について審査しました。80人を超える日本の女性団体メンバーが傍聴。日本に対する審査は6年ぶり4回目です。
日本政府代表団の責任者・南野知恵子参院議員(自民)は概況報告で「残念ながら、取り組みは遅れている」とのべました。
委員からは、日本政府の取り組みの遅れに対する強烈な不満が相次ぎました。条約2条で女性差別となる法律の修正・廃止を定めているにもかかわらず、依然として夫婦同姓、婚姻年齢の男女差別など民法上の差別が残っているとの声が上がりました。法務省は「国民各層や関係方面でさまざまな議論があり、動向を注視している」と回答し、場内から失笑がもれました。
また、「条約を"宣言"とみなして、法的拘束力を持つものとみていないのではないか」などの指摘もあがりました。
このような現状を打開するには、女性をはじめ国民全体による差別撤廃の運動がぜひ必要です。
(09.07.28)