「はぐるま」 2014年 秋季号
NO.221



赤旗まつり 11月2日 東京・夢の島公園
Contents
 プラント・環境カンパニー 東京技術部門等の約300名を神戸工場へ配転
 パートナー社員の賃金規則等が発表
 大河
 プライバシーを丸裸にする特定秘密保護法が施行に
 【主張】アスベスト被災者に一刻も早い補償と救済を!
 読者の広場
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川崎重工業 プラント・環境カンパニー
東京技術部門等の約300名
(派遣社員含む)を神戸工場へ配転
住居は「基本的人権の基礎」であり、
安易な遠隔地配転は許されない!


会社は、8月20日に、プラント・環境カンパニーの東京技術部門等の239名を来年の4月1日に神戸工場に配転させると労組に提案しました。同時に入業する派遣社員等の約60名も移転させるとしています。その理由として、2013年度に経常赤字に転落したエネルギープラント事業の「再生と強化を図る」などと説明しています。

職場では、子育てや親の介護、持ち家の処分などの対応を迫られ、戸惑いと不安が広がっています。

配転命令には3要件が必要

会社は、配転命令の権限を無制限にもつわけではありません。人事権の濫用にならないためには、少なくとも以下の3要件が求められます。

①配転に客観的な合理性があること、②配転が労働者の生活権を侵害しないこと、③配転手続きが信義誠実であること。

今回の配転は、どの要件も満たしているとは言えません。

働く人を大切にし、一人ひとりのモチベーションを上げることによって解決するのが経営者の役割


会社は、経常赤字について、「調達・品証・工程管理での対応能力不足が主たる要因」で、「プロジェクト対応能力の強化を図る」ために東京技術部門等を神戸に集約し効率化するとしています。2012年度以降、なぜ急激に「対応能力不足」に陥ったのか、その真の原因究明がないまま、結論ありきの配転では「客観的な合理性」があるとは言えません。今でも長時間労働が問題になっているのに“もっと働け”と言っているに過ぎません。

これまでエネルギープラント事業は、何度も工場の閉鎖・移転などの組織再編を繰り返してきました(注)。労働者に一方的に犠牲を強いるやり方を改め、働く人を大切にし、一人ひとりのモチベーションを上げることによって、経営問題を解決していく経営施策に転換すべきではないでしょうか。

遠隔地への配転強行は「なしくずし解雇」、会社には育児・介護の状況に配慮する義務がある

遠隔地への配転は、肉体的・精神的・経済的負担など、家族にまで重大な犠牲を強いるものです。それに応じられない労働者は、退職に追い込まれることもしばしばでした。そのため遠隔地への配転は、「なしくずし解雇」とも言われています。いずれにしても遠隔地への配転は生活権の侵害になります。

会社には、労働者を配転させる場合、小中学生を含む育児や介護の状況に配慮する義務があります (育児・介護休業法26条、ILO156号)。本人の同意や配慮なしの配転強要で、「なしくずし解雇」にするようなことは決して許されません。

住居は「基本的人権の基礎」であり、それを保障するのが企業の社会的責任


会社は、配転先の住居について、「社宅申し込み前の見学は考えてない」「会社が入居先の割り当てを決定していく」と説明しています。ここには、労働者は寝起きできる寮や社宅があれば十分であり、住居変更を伴う配転命令も当然視する立場が見えます。

住居は、人間が、憲法第25条にいう「健康で文化的な最低限度の生活を営む」ための基本的な条件であり、生存権や教育を受ける権利、参政権など「基本的人権の基礎」でもあります。労働者は、良好な住環境があってこそ安心して仕事に傾注でき、能力を十分に発揮することができます。労働者が良好な住環境で暮らせるように保障するのが企業の社会的責任です。

組合・本人の同意を得ず一方的な強行では協議案件にはなり得ない、計画変更も含め本人・職場の声を最大限尊重せよ

今回の配転は、組合の中央委員会で了承されたわけではないし、きちんとした本人の同意も得られていません。しかし、会社は、配転手続きを提案したスケジュールで強引に進めています。これでは協議案件にはなり得ませんし、信義誠実な手続きとは言えません。

配転を受け入れた人が住居を変更するには、家族での入念な下見と検討が必要です。単身赴任となれば、本人・家族の双方に生活上の大きな不便をもたらします。そうならないように、会社は計画変更も含め本人と職場の声を最大限尊重すべきです。やむなく住居変更となった場合は、会社が無理なお願いをするわけですから、下見や引越しなどで発生した費用の全額を支給すべきです。

今回の配転が強行されるならば、社員本人と家族はもちろんのこと、派遣社員の雇用や地域にも重大な影響を与えます。今こそ、労働組合が社会的役割を発揮すべきときです。

(注)1988年に大阪工場閉鎖し、技術部門を東京事務所、製造部門を千葉工場に移転。2001年に千葉工場を閉鎖し製造部門を播磨工場に再移転。2005年にKプラントとして分社。2010年に再統合。2011年に播磨工場技術部門を神戸工場に集約。



パートナー社員の賃金規則等が発表
無期雇用を代償に人格・人権を否定する賃金制度


10月から導入されたパートナー社員制度の就業規則や賃金規則等が発表されました。私たちが「はぐるま」夏季号で指摘していた危惧が現実のものとなっています。一般従業員と比べ、就業規則はほぼ同じですが、賃金・一時金・退職金は大きな格差となっています。

賃金制度は生計費原則を否定

賃金のベースとなる本給は、個別に定めるとなっており初任給の基準が不明ですが、昇給も降給もあるとして、昇降給額の決め方は、下の式となっています。20歳で入社し本給を18万円とした場合を試算したのが下のグラフです(昇降給率は成績査定が平均として0・35%)。

昇降給額=(年齢別定額+昇降給率x前年本給)x基準変更係数  本給の昇降カーブ 


それを見ると、カーブの上昇は緩やかでピーク時の55歳のときでも本給は22万円程度、35年勤務して4万円しか上がりません。

また、一時金については、支給月数が3ヵ月程度で、一般従業員とは2か月以上の差がついていると推定されます。


労働者とその家族は、健康で文化的な生活を営む権利を有しており、企業は、そのために必要な生計費を満たす賃金を保障しなければなりません。

しかし、パートナー社員の賃金制度は、結婚し家族を養える水準ではなく、生計費原則を否定したものと言えます。

働き甲斐や能力の向上を否定

本賃金制度は、本給の昇給を年齢別定額と基準変更係数の二つで抑えています。従って、初任給が20万円とした場合でも、下のグラフとほとんど同じになります。

就業規則には「業務上の功績が特に顕著なとき」は表彰するとありますが、昇降給額の式は本給が上がらない仕組みになっており、会社は能力や習熟度の向上を期待していないことを意味しています。

これでは、無期雇用を代償に、働き甲斐や人間として尊厳をもって働きたいという人格・人権を否定するものではないでしょうか。庶務その他補助的業務も正社員として雇用すべきです。

【大河】
「肌の色や話す言語、信仰する宗教が問題なのではありません。お互いを人間として扱い、尊敬し合うべきなのです。そして、私たちは、子どもの権利、女性の権利、すべての人々の権利のためにたたかうべきです。」これは、今年のノーベル平和賞を受賞したパキスタンのマララさん(17)のスピーチです。

日本で権利を主張して殺されることはないかも知れません。しかし、憲法で謳われた国民の権利が、集団的自衛権行使や秘密保護法などで、傷つけられ殺されようとしています。

国民の権利は、先人たちの長いたたかいの歴史によって獲得されたもので、人間が人間として生きていくための根本的条件と言えます。それを本当に生きた権利にするには、権利の現状を点検し、侵害に対してはたたかい、実際に権利を行使することが必要です。

今回、憲法9条が平和賞の候補にあがりました。将来の受賞に向け、9条を守り実践していきましょう。


 プライバシーを丸裸にする特定秘密保護法が施行に
「知る権利」を守るには廃止しかない

多くの法曹関係者や言論・文化人、市民団体などの反対を押し切って安倍政権が成立させた特定秘密保護法が、今年の12月10日に施行されようとしています。この法律は国民のプライバシーを侵害するとともに、知る権利を奪うものであり、日本国憲法に真っ向から背くものです。

川重はどう関係するの?

「特定秘密」の対象として、「防衛」に関する事項では、自衛隊の潜水艦、航空機など、それらの研究開発段階の仕様、性能、使用方法などが入ります。川重では潜水艦や航空機の設計、製造に関わる多くの業務が対象になると考えられます。それらの「特定秘密」を取得し漏えいすれば処罰されることになります。

「特定秘密」の取扱者はプライバシーが洗いざらいに

「特定秘密」の取扱者は、「適性評価」で犯罪歴や飲酒癖、交友関係、ローンなどの返済状況まで洗いざらい調べられます。さらに調査項目は減りますが、本人の父母、子および兄弟姉妹、配偶者の父母および子までも対象となります。

「適性評価」に合格しないと取扱い業務から除外

取扱業務に従事している人に対しては、「適正評価」の対象になったことが告知され、そのための調査に同意を求められます。これは正社員だけでなく、業務に従事するすべての労働者が対象にされ、この同意に応じた上で、適正と評価されなければ、現在の業務を続けることができなくなります。

川重で働く仲間のみなさん、このような人権無視の横暴を断じて許してはなりません。国民の「知る権利」を守るには、特定秘密保護法そのものの施行を許さず、廃止するしかありません。多くの国民とともに頑張りましょう。


【主張】
アスベスト被災者に一刻も早い補償と救済を!


「泉南アスベスト訴訟」国に責任認めさせた

大阪府南部・泉南地域のアスベスト加工工場で働き、肺がんなどで健康を破壊された元労働者、遺族ら89人が国の責任を追及した「泉南アスベスト訴訟」で最高裁が原告勝訴の判決を言い渡しました。

判決は、石綿工場での健康実態の深刻さを早くから認識しながら、まともな対策を講じなかった国の「不作為」をきびしく批判しました。そして労働者の健康と安全よりも、「産業発展」を優先させた国の政策を批判し、国の責任を認めたものです。裁判で誤りを認めようとしなかった歴代政府の姿勢に、道理がなかったいことはあまりにも明白です。

国と企業は被害者の補償と救済に全力を!

川崎重工でも、アスベスト被害を出しており、私たちのHPでも既報のように、今年7月には元社員や遺族が中皮腫発症の安全配慮を怠ったとして、損害賠償の訴えを起こしています。

「はぐるま」前回号では、西神戸工場における石綿健康被害について取り上げました。

アスベスト被害による患者、死者が後をたたないなか、すべての被害者への補償と救済に、国と企業は一刻も早く、誠実に取り組むことが求められます。

読者の広場 
「『パートナー社員制度』って何?」を読んで
なぜ派遣社員から正社員ではなく、「パートナー社員」にしなければならないのかが理解できません。

正規・非正規との間の格差が広がっている今、すべての人を正社員にしてこそ、労働意欲も高まり、「人を大切にする」グローバルな企業としての責任を果たすことができるのではないでしょうか。川重は地域を代表する大企業として、社会的責任を果たす立場から「雇用は正社員が当たり前の社会」への模範を示してもらいたいと思います。
(本社・A子)
赤旗まつりに参加して
東京・夢の島公園で開催された赤旗まつりに初めて参加して来ました。まず会場内の参加者の多さに圧倒されました。志位さんの演説、続いて八代亜紀さんのステージと、どれも会場いっぱいの盛り上がりに、感動と勇気をもらいました。志位さんが八代さんのファンであるとは意外でした。
(神戸・T)
仕事帰りに坂の下の駐車場手前にて、「はぐるま」を配布されている状況を後から歩いて見ていると、ほとんどの人が受け取らないことを知りました。受け取る、受け取らないは、個人の自由意志の選択ですが、受け取らない人の大半が、意味が無い、受け取ると共産党と思われる。会社にチクられる、変な事に巻き込まれたくないetc。

私は、「御苦労さん」と言って受け取りました。拒否して受け取らないのは、簡単ですが、受け取るにはほんの少しだけ勇気がいるものですネ。
(西神戸・レオナルド・ダ・ヴィンチ)
皇太子殿下が兵庫工場を視察に!
11月12日夕方、皇太子殿下が兵庫工場の視察に来られE7系北陸新幹線や、札幌市営地下鉄9000形の車体を見学されました。

かなり前から工場内外が綺麗に整備され、マンホールには点検シールが貼られました。この日会社は特別に、9時始業、18時退業に変更して対応し、午後からは職場待機で静まり返り、緊張した1日でした。
(兵庫・M)
神戸工場おかしいぞ
8月2日「みなとこうべ海上花火大会」、浴衣姿の人が工場内から見学する姿、夜の工場は暗く海に落ちたらどうするの?

8月8日、盆休み前の納涼会、自衛隊員家族は招待したのに、従業員の家族は拒否。これっておかしくない? 従業員家族も招待すべきです。
(神戸・N)
久しぶりの進水式での高鳴り
ゆっくりと滑らかに目の前の船体が左へと動き始めた。そう、この瞬間を待っていた。当社主力のLNG運搬船に比べればはるかに小さい5万トンほどのばら積み船だけれど、船底近くで見上げていた子供たちにとってはどれほど大きく見えていたのだろう。

現場の係員とおぼしき人の力強い英語のアナウンスを背に受けてまさしくエレガンスに無事進水するのを見届けて、船台を埋め尽くした人々は談笑しながら家路へと急ぎ始めた。OBの人や同じように招待された近所の人たちと共に。
(神戸・S)
企業ぐるみ選挙無法地帯
来年4月の明石市議会選挙に立候補する久枝氏の選挙活動が活発です。組合の「ふれあい」秋号NO・175では4ページにわたって宣伝、工場内では支える会入会案内を社内メールで送付してくる。この時期になりふり構わぬエスカレートぶり。

国政では古い政治体質が問題になっています。こんな古い企業ぐるみ選挙もいい加減あらためてほしいものです。
(明石・3研ビルの落ち葉)
超難関な正社員試験
契約社員100人中15人が1次で合格した。2次で3~4人合格する超難関な正社員試験。何回も受けて落ちている人もいるので、事前に辞めてしまう人もいるし、1次で落ちた人も何人か辞めている。
(西神戸・Y)
社長視察
10月8日、工場に社長が来る事になり、工場内の草刈り、芝、植木の刈り込みも総務の監視のもと行われた。当日は、レグサス3台でやって来て、歩くルートの端々に課長が監視として立ち、ドアボーイをしていました。
(西神戸・I)


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