「はぐるま」 2016年 秋季号
NO.229


Contents
 船舶海洋事業「事業の継続性を含め」検討 来年3月末までに結論
 大河
 中国赴任中の社員が宿泊先で事故死
 人間の尊厳を奪う長時間労働
 女性への差別を解決し、男女が共に活躍できる職場を!
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川崎重工・船舶海洋事業
「事業の継続性を含め」検討
来年3月末までに結論
経営陣は“危機感”をあおるのではなく
120年流した汗水に誇りをもち、労働者・下請企業等が安心して仕事に打ち込める経営施策を示すべきだ!



あまりにも唐突な発表


7月末の第1四半期決算では、船舶海洋は営業利益の今年度見通しは「前期に比べ改善」と発表していました。

その2ヵ月後に、「通期の営業損益が約130億円悪化する見通し」となり、「事業の継続性を含め」今後の方針を年度末までに決めて実行すると発表しました。あまりの唐突な発表に、マスコミが「撤退も視野」と報道し、神戸や坂出の町をも驚かせました。

120年、労働者・地域等が守り育てた造船の灯を決して絶やしてはならない

造船産業は、あらゆる業種と技術力の労働集約型産業であり、関連する中小零細企業のすそ野はきわめて広く、それらを住居や商店街、学校、病院、行政などの地域で支えています。

川重の造船業も、120年にわたり多くの関連企業と地域に支えられ、共に発展してきました。

もし川重が造船を「撤退」するとなれば、造船関連で暮らす人たちだけでなく、地域の経済や社会に深刻な打撃を与えることになります。そして、これまで蓄積してきた技術・技能が途絶えかねません。雇用や地域経済等を守るのが大企業の社会的責任であり、損益が悪化したからといって、神戸のシンボルとまで慕われた造船の灯を決して絶やしてはなりません。

「損益の悪化」は、これまでの目先の利益優先の経営によるものではないか

ものづくりを継続するには、企業内および関連企業との有機的な協業や、中断のない世代継承と共に技術・技能伝承が必要となります。

しかし川重は、1970代と80年代に大量の人減らしを強行し、また、新規採用を長い間中止した時期がありました。さらに、正社員から非正規雇用への転換、いくどもの下請企業等への単価の引き下げ、人員削減と成果主義による過酷な長時間労働への追い込みなど、自らものづくりの継続を阻害する行為をしてきたと言えます。

今回の「損益の悪化」という中身をみると、ブラジル関係の損失は労働者の責任外の問題であり、他のオフショア作業船や新LNG船のコストアップは、まさに目先の利益優先の経営がもたらしたものではないでしょうか。そういう点では、他のカンパニーも同じ問題を抱えているということになります。

危機感の強調より、一人ひとりのモチベーション向上で経営問題の解決を

ものづくりの土台は、「働く人間」です。その土台は、本来もつ労働の性格―主体的、協働、社会的貢献等―を充分発揮させることで強くなります。そうすれば、その上にしっかり技術・技能を蓄積できるわけです。

経営陣は、危機感をあおるより、ものづくりの土台である一人ひとりのモチベーションを上げることによって経営問題を解決していくことが求められます。

ROIC経営は株主至上主義を強め、ものづくり土台を衰退させないか

会社は、「ROICの改善による企業価値の向上」を強調し、将来に亘って8%達成できない事業は「縮小・撤退」すると表明しています。今回の船舶海洋事業の会社発表もこの線上のものでしょう。

ROIC経営は、投下資本に対する利益だけが追求される株主至上主義に導く危険があります。短期間に成果を出そうとすれば、投下資本を小さくするために、人件費や技術開発費等の削減に走らざるをえなくなります。ものづくりの土台を衰退させ、企業も日本もだめにしてしまいます。

 ROIC = 利益/投下資本
 
造船産業は成長産業、長いスパンに立って、ものづくりの醍醐味を実感できる職場づくりを

日本造船工業会会長に就任した川重・村山会長が、「中長期的には、世界経済の成長による海上荷動量の増加…市況も好転」すると述べているように、造船産業は未来ある成長産業です。

これまで、好不況の波を受けながらも造船産業は成長・拡大してきました。今、経営陣に必要なことは、これまでの歴史に誇りをもち、労働者・下請企業等が安心して仕事ができ、ものづくりの醍醐味を実感できる経営施策を示すべきです。

【大河】

「強行採決するかどうかは佐藤さんが決める。そのためにはせ参じた」…山本農水相が与党にTPPの強行採決をけしかけた発言です。そして、自公維で強行採決しました。

これは、自民党の「TPP断固反対 ウソつかない」というかつての主張と、米・麦等の重要5項目は関税撤廃の対象外とする国会決議への重大な違反です。国民の7割が「慎重審議」というのに、安倍政権の暴走が極まっています。

TPPは、すべての関税を撤廃し貿易を自由化するもので、日本の食料自給率を27%まで低下させ、食の安全や保険制度等の社会を守る制度も緩和撤廃します。さらに、多国籍企業が損害を受けたとして相手国に巨額の賠償を訴えることのできるISDS条項の仕組みまであります。まさにTPPは国民の暮らしや安全、国家主権さえも多国籍企業に売り渡す協定です。

国民のためにならないTPPは廃案し、世界各国と食料主権を尊重した経済関係を発展させるべきです。


 川重 プラント・環境カンパニー
中国赴任中の社員が宿泊先で事故死
過度の心身疲労が一因に
今年3月に労災認定 会社は再発防止に万全を尽くせ!


2013年4月から中国のセメント設備関係の合弁会社に単身赴任していたAさんが、3ヵ月後の7月に、宿泊先のマンションで尊い命を失いました。Aさんは、妻子を持ち、将来期待されていた30代の中堅社員でした。

言葉が通じない海外での勤務・一人生活は想像以上のストレス

Aさんは、幹部職員と共に赴任する予定でしたが、結局、最後まで一人での赴任を強いられました。赴任早々、現地の通訳を通じて、頻発する不具合対応に追われ、宿泊先に帰宅した後も深夜遅くまで、また休日も、その対応に迫られました。
6月中旬ころから元気がなくなり、家族との顔を見ての通話でも、表情がなくなっていったということでした。帰宅しても話す相手がおらず、現地での習慣や文化の違いも重なり、想像以上のプレッシャーやストレスだったのでしょう。

外務省の統計では、海外での死亡邦人は年500~600人、死亡原因の2位は「自殺」ということで、メンタルヘルス対策の重要性が指摘されています。

会社には赴任者の命・健康を守る義務があり、国内以上に、メンタル面も含めた万全の対策を講じるべきだ

Aさんは、今年3月に、労働基準監督署が業務災害だったとして労災認定を受けました。会社の管理下以外での死亡の場合、労災認定が難しい状況の中で、これ自体はたいへん意義あるものでした。

しかし、海外赴任によって尊い命を失うようなことは、決してあってはなりません。会社は、海外勤務や出張者についても、当然、命と健康を守る「安全配慮義務」を負っています。海外の場合は、国内以上に、赴任先の状況に応じて、危機管理や健康管理をきめ細かく実施しなければなりません。とくに、労働環境・生活環境の実情をよく把握し、メンタル面の相談・フォローアップ等の万全の対策を講じるべきです。

その点では、Aさんが、宿泊先に帰宅後も、深夜遅くまで、また休日も仕事づけになっていたことや、赴任前の健康診断で再検査を指摘されていたにも関わらず、そのまま赴任させたことなどは大問題です。

会社は「安全配慮義務に違背」していないとして遺族への謝罪を拒否

遺族の方は、“幼い子供たちを残してなぜ”“中国に行かなければ”という無念でいっぱいでしょう。

会社は、その思いを逆なでするように、弁護士を通じて、「安全配慮義務に違背」していないと遺族に通知し、謝罪もしていません。これでは、とても尊い命をあずかる会社の態度とは言えません。

会社は、Kawasaki Report 2016で、「『人間尊重』ならびに『健康第一』を旨とし、人財が誇りを持って安全に安心して活き活きと働き続けられる環境を整備」すると宣言しています。この内容で実情を厳しく点検し、反省点と人間味ある再発防止策を公表することが、Aさんの死に報いることではないでしょうか。


人間の尊厳を奪う長時間労働
命より尊いものはない あの電通過労自殺事件を繰り返すな!



今国会に提出されている「裁量労働の営業職への導入」は電通の要求だった


新入女性社員の過労自殺で世間に衝撃を走らせた電通は、「長時間労働の温床」と指摘されている裁量労働制を営業職にも導入せよと主張していました。事もあろうにその電通を厚労省が、時短優良企業に認定していました。

サービス残業は犯罪、会社は幹部社員を犯罪者に仕立てるな

サービス残業は、労働基準法違反であり、「6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金」が科せられる犯罪行為です。会社は、ただちに一掃せよ。

長時間労働是正の手立てをすぐに

今年の政府の発表によると、仕事が一因となった自殺者は年間2000人、その背景には異常な長時間労働があります。

長時間労働は、人間の尊厳としての「生命、自由及び幸福追求」(憲法13条)の権利や、家事・育児などの次世代を育成する大切な時間を奪い、体力を消耗させます。

会社が「長時間労働の抑制」と言うなら、ただちに左記の実行を求めます。
・時間外労働の限度を、特別条項付き36協定をやめ、労働大臣告示の月45時間に引き下げる。
・連続休憩時間を最低11時間確保する。(深夜12時まで働いたら、翌日出勤は11時以降)
・始業終業管理は、厚労省指針のICカード等で行う。
・休暇完全消化できる要員を確保する。

「しごと日記」のすすめ

3年前に本紙上で提案したもので、年月日、分単位の始業・終業時間、職場で気になったことなどを記録し、帰宅途中に自分の携帯から自宅のパソコン(あるいは家族)にメール送信するものです。

これによって、自己の働き方をチェックできますし、万一のときに自分と家族に必ず役に立ちますので、改めてお勧めします。


女性への差別を解決し、男女が共に活躍できる職場を!



日本の男女平等111位


世界経済フォーラムの発表によると、今年の日本の男女平等は、144ヵ国中、111位でした。なかでも「経済活動への参加」は118位の状況です。

日本は女性差別撤廃条約を、批准しているにも関わらず、条約の実効ある施策を具体化せず、安倍政権は「女性の活躍推進を」と言いつつ、新たな女性差別と格差を広げています。

川重の男女格差について

川重では、ダイバーシティの推進で「女性の活躍推進」を進めており、仕事と子育てを両立して働き続けられるように育児の制度は良くなってきています。

しかし、下表の川重の数値(川重ホームページから)では、女性の従業員は男性の6%、幹部職員は0・6%、平均年間給与は71%、新卒採用は6%、離職率は逆に約2倍です。女性にとっては、まだまだ働きにくい職場状況と言えます。

差別の是正と、均等待遇の実現を

女性差別を解決し、女性が活躍できる職場にするためには、一方の性に不利益な影響を与える「すべての間接差別」を禁止することが必要です。パートナー社員制度もこの間接差別と言えるでしょう。

女性が働き続けるためには、女性の残業規制や深夜業の禁止措置などの女性保護の措置をとるとともに、蔓延している長時間労働の法的規制など、男女双方の働き方の是正・改善が欠かせません。

読者の広場 
夢のボーナス
私は派遣社員として入業し、3年ほどになります。職場の方々は、みなさん本当に親切で、仕事だけでなく、ときには仕事終わりに食事へ行ったりと、いつもいろいろな面でお世話になっています。

そんなふうに、毎日とても楽しく働いていますが、もしほんの少しでも、ボーナスがあったら、と思うことがあります。たとえ少しでも、自分が役に立っていることへのご褒美だと思えることができますし、さらなるやる気にもつながります。

どうか、ほかの派遣社員の方のためにも、検討していただけたらなと思います。よろしくお願いします。
(SL9)
祝日振替出勤日の託児の案内について
福祉ニュース10月4日に案内がありました。11月3日が振替出勤になるため託児所が開設されています。スタッフ2名で、定員は20名。子供の託児先に困っている人にはありがたい対応です。でも対象が正規社員だけです。

工場で働く女性のほとんどは派遣社員です。対象を正規社員だけでなく、非正規社員も含めてほしいと思います。
(明石工場ママの会より)
バームクーヘンが全員に届くように
120周年記念のバームクーヘンが配られましたが、子会社で働く派遣社員の中に届いていない方がおられます。まだそんな差別が残っています。同じ工場で働くすべての労働者に、バームクーヘンが届くように気配りをお願いします。
(バームクーヘンのビスケットより)
スポーツの秋なのに・・・
西神戸工場は、KPM時代を経て、敷地は広くなり、建屋もいくつか建ち、様変わりしたヘリポートには、時々ドクターヘリがやって来る。でも、食堂は一つでグランドがない。

昔は、昼休みにテニポンやソフトボールをして過ごしている人が多かったが、いまはスマホをしている人がほとんど。グランドがあった頃は、ソフトボール大会やゲートボール大会等もあって、賑やかだったのに・・
(ピコ次郎)
すばらしい進水式
去る9月22日に、神戸工場でガス船の進水式が行われました。大きな船体がゆっくりと滑っていく様子に感動しました。
しかしその後、会社は造船赤字と事業撤退の可能性も検討すると新聞発表したので、大変不安です。川重で働く人や関係会社の方々の生活が守られる経営をお願いします。そして、またあの感動の進水式を、みんなで見守っていきたい。    (神戸・Y子)
造船「構造改革」と高訓生
造船の「構造改革」が新聞紙上を賑わせている。来年3月までに結論を出すというが、どのような結論になるのか大変気がかりだ。

神戸工場の職場では、今年も入社した高訓生の若者が元気に頑張っている。そんな中でも、造船の未来に夢と希望を持って入社した若者も少なくないだろう。彼らの夢の実現と未来のために、絶対に今後も造船業を継続してほしい。一時の不調で判断するのではなく、地域の経済性も考えて、是非長期的な視野で造船の未来を展望してもらいたい。
(神戸のK)
10月14日、神戸新聞に「創立120周年記念広告」が掲載
1000名の従業員が登場、今年の春ごろに撮影されたとのこと。ウォーリーを探せのように知った顔を見つけ、だれだれさんが載っていたと。

10月17日には職場でも話題になっていました。みんなが笑顔で収まっているのが素敵でした。

しかし別の新聞には「川崎重工が造船から撤退も視野」とショッキングな記事もありました。1000人の笑顔を裏切るようなことがないよう拙速な経営判断は避けてほしいものです。
(工場のウォーリー)


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