「はぐるま」 2018年 3月号外


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川崎重工 新幹線「のぞみ」の台車枠き裂問題
個人責任の追及ではなく、ものづくりの土台を真に強める教訓を!



昨年12月、新幹線「のぞみ」の台車枠が、破断寸前であったことが判明し世間を震撼させました。

川重の経営陣は、重大な事故につながらずにすんだ不幸中の幸いから、どう教訓を引き出すかが厳しく問われています。その結果によっては、これからの新幹線の製造に留まらず、川重全体のものづくりの未来を決めることになるでしょう。


川重経営陣の発表に落胆の声が

製造元の川重は、2月28日に、この問題についてプレス発表し、同日に謝罪会見を開きました。経営陣は、今回の台車枠き裂問題について、作業指示票の規定通りに作業をしていなかったことを原因の一つにして、当時の作業指示者をきつく問題にしました。

これに対し、新聞やネットでは、「川重ずさん 現場任せ」「最も優先されるべき安全性がないがしろ」等々の記事が数多く流れ、職場でも「がっかりした。本当に信頼回復できるのだろうか」「あの会見はすごく悲しい、班長の責任にするか」「職場では台車事件の話題で日々苦しんでいる」「個人の責任にしたが、あんな発言だめ。事故にならず良かった」「外で川重の名前を出せない」等々の声が上がっています。

個人責任の追及では、作業ミスを生みだした真の原因がおろそかにならないか

重大な事故やミスは、それを誘発する幾重もの要因が積み重なって起きるものです。直接的な「原因」とされたことでも、よく検討すると様々な要因の「結果」に過ぎないことがしばしばです。

台車枠き裂の直接的な原因とされる作業ミスは、個人が誰であれ、そこに追い込んで行った様々な要因の結果ではないでしょうか。それを個人責任とすれば、再発防止策は、基準や規則で個々人の管理を強化するものにならざるを得ません。一時的な対策になっても、作業ミスを生みだした様々な要因の検討と真の原因の究明がおろそかになり、問題をさらに深刻にして別の形で表れてくる懸念があります。

ものづくりの経営施策に問題がなかったのか徹底した究明が必要では

ものづくりは、営業・設計・調達・現場等の各部門や協力会社などの多くの人たちの協働で行っています。これらを円滑に運ぶための労働条件や人間関係、連携の構築は、経営施策の問題であり、それは製品の質に大きな影響を与えます。

問題の台車枠を製造した2007年当時の兵庫工場は、高水準の操業対策に追われ、生産現場では工程が混乱していたと言われています。労働災害や精神疾患もとくに高い件数になっていました。また、社長の年頭挨拶では「ROIC9%以上の達成」が強調されていましたので、コストダウンと納期厳守がとりわけ厳しく求められたことが想像されます。

また、深夜までの異常な長時間労働やサービス残業、パワハラなどが放置されていなかったかの検証も大切です。職場のコンプライアンスが形骸化されていては良い製品はつくれません。

経営陣は、これらの問題をよく検討し、作業ミスを誘発した真の原因を徹底的に究明し、経営施策の経営責任を明確にしながら、〝良いものをつくりたい″という働く人々の思いに応えて、ものづくりの土台を真に強める教訓を、ぜひ引き出してほしいです。

そうすれば、きっと世間とものづくりに関わる人たちの共感を得ることができるでしょうし、「技術の企業集団」としての信頼回復の第一歩にもなることでしょう。

労働組合は本来のチェック機能を果たし、自由に意見を言える職場づくりにリーダーシップを

原因究明に際し、企業のチェック機能としての労働組合の果たすべき役割もきわめて重要です。労働者や協力会社に責任転嫁をさせないためにも、労働組合みずからが職場の声と英知を集め、原因究明に積極的に乗り出すことが求められているのではないでしょうか。それによって、自由に意見を言える職場づくりや職場の連帯強化にもつながるでしょう。