播磨工場は何処へ!

 

 播磨工場/鉄構ビジネスセンターが車両カンパニーへ編入

播磨工場は、4月末に会社より「鉄構ビジネスセンターにおける事業構造改革の推進について」提案を受けて以来、この2ヶ月間、談合問題あり、分社化問題あり、そして、電撃的な車両カンパニーへの編入発表と、激動の戸口に立っています。
これら一連の会社の動きについて、6月6日付「労組ニュース1499号」、「Kawasakiホームページ」・6月29日付「川崎重工グループ・従業員へのメッセージ:大橋社長」、「鉄構ビジネスセンターの皆さんへのメッセージ:能勢センター長」と職場の声をもとにして、会社は、播磨工場とそこで働く労働者を何処へ行かせるつもりなのか、考えてみたいと思います。

<労働組合の主張と会社の言い分>

5月23日生産専門委員会を開催し、2回目の「鉄構ビジネスセンターにおける事業構造改革の推進について」の労使協議を行いました。その席で労働組合は、「…市場環境の見通しを含めて結果に対する責任は経営者にあると考えている。事業規模が確保されなかった場合の経営責任について、明らかにされたい」と組合員の気持ちを代弁しました。それに対して会社は、「…今回提案した施策を実行することにより、鉄構BCが収益を確保できる体制を早く構築し、鉄構事業の継続と雇用の維持を図ることが経営者の責任であると考える。このように状況変化に応じて迅速に対応することも経営者の責任であることをご理解いただきたい」と過去の経営見通しの甘さに対して謝罪しないだけでなく、この機に乗じて人員削減を伴う事業構造改革を推進しようとする姿勢を示しました。
職場では、「テレビでお偉いさんが、テーブルに頭を付けるぐらいに謝罪をしている姿を見るが、まず、うちの経営者もそれをするべきだ」、「鉄構事業の継続と雇用の維持を図ると言っている、しっかり記憶しておくよ」など、会社に対しての怒りの声や冷ややかな声が交錯しています。

<Kawasakiホームページは何を語ったか>

ホームページは、6月5日付各新聞社「橋梁部門の分社化」記事に対してのコメントとして、「…現時点では、橋梁事業の分社化については正式に決定していませんが、今回の鋼鉄製橋梁工事の談合事件を契機に、分社化の検討を加速させてまいります」と述べています。
本来、談合という反社会的な問題を引き起こした会社としては、経営責任とコンプライアンス委員会の不備に対する謝罪と、再発防止策を発表することが、まず行わなければならない行動です。それ無くしては、国民や市場の信用を回復することは出来ません。しかし、会社が出したコメントは、先に述べたように、全ての人々の気持ちを逆撫でするような内容でした。事実、橋梁のみならず他の製品についても、公共事業関連を中心に指名停止状態となり、予想以上に大きな痛手となっています。
職場では、「このコメント記事は、電光石火で従業員だけでなく、関連会社の人たちにも広がっているよ」、「働く皆は一生懸命頑張ったのに何てことを言うんだ。まず、謝るべきだろう」など、たくさんの怒りの声が出ています。

<社長メッセージは何を語ったか>

まず社長は、「100年を超えて事業を継続している会社はそんなに多くはありません」という点について語り、「今後とも大胆かつ冷静に」「選択と集中」「構造改革」「経営の品質保証」の実践が不可欠であることを強調しています。
次に社長は、「駅伝レース」に例えて「タスキ」=「KAWASAKIブランド、事業の歴史、財産、人材などの経営資源を引き継ぎ」を述べ「区間記録に挑戦して邁進し、次の走者にタスキを渡すことが私の使命」であるとも語っています。
より良い姿で次世代の労働者に「タスキ」を渡すことは、労働者も同じです。そのためには、労働者を現在のようなサバイバル的な走り方ではなく、理性と知恵を駆使しながらペース配分を守る走り方に変えていく必要があると考えます。
職場では、「頑張れ、頑張れと言われても、これ以上頑張れないよ」、「ただ目先のことばかり上から言われて、先が見えない」など、走れなくなっている労働者や幹部職員の姿が見えています。

<センター長は何を語ったか>

7月1日付の組織変更が、労働組合にも労働者にもほとんどの幹部職員にも、何の前触れも無くセンター長から通達がありました。その内容は、談合問題・コンプライアンス不徹底などの点にも触れていますが、要点は、鉄構ビジネスセンターを「大型構造物ビジネスセンター」と改称して車両カンパニーへ編入すること、環境ビジネスセンターはガスタービン・機械カンパニーへ編入すること、橋梁事業の分社化や業界再編も視野に入れ営業・技術・間接部門のスリム化を進めること、播磨工場としての役割を重視すること、などでした。
以上のような通達を述べた後、「物造り」の原点に触れ、「私が先頭に立ち、これからの難局に全員一丸となり立ち向かっていきたい」旨の言葉で締めくくっています。そもそも、鉄構ビジネスセンターのセンター長として、今回の談合事件も含めた全ての問題に関係のある立場にありながら、責任問題を一言の反省の弁のみでお茶を濁し、引き続き現職に留まろうとすること自体、何の反省もしていない証拠です。
職場では、「まず、責任を取って辞職すべきだ」、「自分の側近を切って、どこまでも自分の保身を考えている」、「こんな人にはついて行けないよ」など、怒りがおさまりません。労働組合に対しても「組合もバカにされたものだ」などの声も聞こえます。

<播磨工場とそこで働く労働者は何処へ>

会社は、4月末に「鉄構ビジネスセンターにおける事業構造改革の推進について」提案してから、談合事件が発覚し、そして、ホームページに橋梁部門の分社化推進をコメントした1ヶ月半の間、一言も鉄構ビジネスセンターの車両カンパニーへの編入について、言及していません。それがなぜ、車両カンパニーへの編入に至ったのか?この点は、環境ビジネスセンターとの関連もあると考えられますが、何らかの理由で、本社直轄という状態が出来ない状況があったことは推察出来ます。
まだ、会社は、人員のスリム化のみの要求以外は手の内を明かしていません。当然、今後の会社の動向から明確になってくると考えられるので、会社の動きからは目が離せませんが、社長のメッセージやセンター長からのメッセージから読み取れることは、播磨工場を「全社的な観点から活用策の検討を進める」ことと、「人員のスリム化」を進めることは、明らかです。
播磨工場は、世界有数の設備を有した工場であり、大型構造物から、車両・船体・機体・原動機・建設機械等々、どんなものでも対応できるとともに、海岸線に立地しているという好条件から、川崎重工として魅力ある工場であることは確かです。しかし、それと、そこで働いている労働者が全員必要であるかどうかは、別問題のようです。今後、播磨工場運用に必要な労働者と、それ以外の労働者との「選択と集中」が考えられます。
また、播磨工場は、衰退しつつあった旧産機プラント部門から日の出の勢いであった鉄構部門へ移行した経緯がありましたが、今回の状況も鉄構部門から車両部門への移行という過去の経緯と同じ状況のように思われます。
職場の労働者は、「車両カンパニーという軒先で、一時的な雨宿りをしているだけだよ、絶対に母屋には入れてくれないよ」、「車両カンパニーが欲しいのは、工場のみと運用人員のみで、それ以外の人はいらないんだ」というように、会社がどんなに誤魔化そうとも本音を見抜いています。
社長メッセージは、「皆さんとのコミュニケーションを大切にしていきたい」、「着実に成長する、グローバル・カワサキをめざし、さあ、皆さん一緒に走り始めましょう」という言葉で結んでいます。この言葉は、カワサキで働く労働者も同じ思いです。そのためにも、労働者を大切にしてこそ、21世紀の未来が開けるのではないでしょうか!

(05.07.27)