終わりに

 以上に述べたように、日本でも、世界でも、今、歴史の流れに大きな潮目の変化が生じているようです。
 第2次大戦後、主要な資本主義国では、新に登場した社会主義国への対抗の意味も含めて社会保障を手厚くしながら、国家による財政投融資により国内需要を拡大することで不況と失業を克服しようとする、ケインズ主義的な政策が採られました。
 ところが、80年代に、イギリスのサッチャー首相のサッチャリズム、アメリカのレーガン大統領のレーガノミックスに代表される「新自由主義」が登場し、国民経済を前提とするケインズ主義的経済政策を激しく攻撃して「構造改革」を掲げ、小さな政府、社会福祉の削減、規制緩和、民営化と市場経済の導入などの行なうようになりました。
 この「新自由主義」は国境を越えて活動する多国籍企業と巨大金融資本の利益を代表するものなので、「新自由主義」と多国籍企業主導のグローバリズムとは、双子の兄弟です。
 この「新自由主義」は、南米でも、アジアでも、日本でも、格差の拡大と貧困化を招き、今や、国民大衆の鋭い反撃に直面しています。
 現在、人類は、地球温暖化や食糧危機などの待ったなしの課題に直面しています。これらの課題に答えるには、「新自由主義」的な弱肉強食の市場原理にすべてをゆだねるのではなく、多国籍企業や巨大金融資本、あるいは、ヘッジファンドなどの跳梁する投機資本に民主的な規制を加える必要があります。
 今、日本でも、世界でも、そういった民主的規制や民主的変革への大きな闘いが始まったのではないでしょうか。そして、民主的な変革を目指す闘いの中から、資本主義を超えた社会主義への展望が見え始めるのではないでしょうか。
 今、私たちは、そういった民主的変革を目指す疾風怒濤の新しい時代を迎えつつあるのではないでしょうか。

 最近、以上に述べたことを証明するようなで出来事が起こっています。
 朝日テレビのサンデープロジェクトが20周年記念企画として「世界の転換期 日本の進むべき道」と言うテーマで不破前議長、中曽根元首相、土井元衆議院議長の三者鼎談を行ないました。不破議長は、政治を志した理由、ソ連崩壊後の世界の特徴、21世紀の特徴と資本主義・社会主義、日本国憲法の持つ意味、など縦横に語りました。放送後、「不破さんの発言に大変な感動と将来性を感じた」などといった感想や意見がメールや電話で多数寄せられました。(しんぶん赤旗 08.5.12)
 また、サンデープロジェクトは「資本主義は限界か? 日本共産党。志位委員長に聞く」という番組を放送し、志位委員長は質問に答えて、マルクスと「蟹工船」ブーム、投機マネーの暴走、貧困の根源に労働ルールの破壊がある、ルールなき資本主義からルールある経済社会へ、資本主義で環境問題を根本的に解決できるか、といった話を、マルクスの言葉や各種の資料を提示しながら語りました。この放送も、大きな反響を呼んで、「よく分かった」とか「感動した」と言った声が多数寄せられました。しんぶん赤旗 (08.5.19)
 日本共産党員作家で官憲の拷問によって虐殺された小林多喜二の代表作「蟹工船」が今、ブームを呼んでいます。新潮文庫の『蟹工船・党生活者』は「年間2500部だったものが、この数ヶ月は百倍のペースで売れている」。新聞やテレビでもこのブームを色んな形で取り上げています。(朝日新聞 08.5.16) こういったブームを受けて、作家の雨宮処凛(かりん)さんは、日雇い派遣などで働く若者たちが「蟹工船」を読んだり「資本論」を学ぶようになった状況の説明の後、「私たちは限界まで追いつ詰められ、生きるために立ち上がったのだ。これは、貧困と言う生活の実感に根ざした生存運動なのだ。これまでは社会の仕組みや闘う方法を知らず、国や企業につけ込まれてきた。でも、自ら動けば社会は変えられるのだと気付き、闘うことが楽しくなってきた。生存をかけた闘いが始まったのだ」と述べています。(朝日新聞 08.5.18)
 こうして、今や、新しい時代の歯車が動き始めたのではないでしょうか。