世界へ眼を向けると

南米では

 アメリカの裏庭といわれていた南米では、80年代に債務支払い不能状態になったとき、IMFや世界銀行などにより規制緩和、民営化、資本の自由化、福祉予算の削減などの「新自由主義」の政策をおしつけられ、その結果、各国の経済成長は停滞し、所得格差は拡大し、国内の産業は破壊・後退させられ、対外債務はそのまま残されました。そこで、80年代は「失われた10年」、90年代は「絶望の10年」と呼ばれています。これらの矛盾が沸騰点に達するなかで、一連の国々で「新自由主義」からの決別し、自主的で民主的な経済政策への大転換をめざす民主的変革の巨大な波がおこりました。ベネズエラ(98年)からはじまった民主的変革の巨大な波は、ブラジル(02年)、アルゼンチン(03年)、パラグアイ(03年)、ウルグアイ(04年)、ボリビア(05年)と南米大陸全体に広がっています。04年には南米12カ国の首脳会議で、国家主権の平等、紛争の平和的解決、民主的経済秩序などを掲げた南米諸国共同体の設立が宣言されました。(日本共産党24回大会報告)。

 そして、そのラテンアメリカの変革のなかで、いくつかの国で社会主義の旗がかかげられはじめたのです。
ベネズエラでは、チャベス大統領が、国づくりを社会主義の方向ですすめようと呼びかけ、地域住民が自分で計画をたてて、その計画が評議会で認められると国から必要な資金が提供され実行されるという、下から積み上げる独創的なやり方で「ソシャリスモ(社会主義)」の運動が取組まれています。
 ボリビアでも、資本主義モデルはだめだ、社会主義に向かって進もうという流れがいま革命の中心になりつつある、といわれます。モラレス大統領は、国連総会で演説し、IMFの押しつけ、少数者による資源の独占、地球温暖化の深刻さ、軍拡競争と大量殺りくなどを、資本主義の経済モデルが生み出したものとして告発し、最後に「こうした経済モデルを変えて資本主義を一掃することが重要だということを、みなさんに訴えたい」と述べました。
 ブラジルでは、07年8月〜9月に開かれた政権党のブラジル労働党の大会の3つのテーマのうちの第一のテーマが「社会主義」でした。ここでも、新しい国づくりを問題にするとき、自分たちの国民的体験からいっても、資本主義の道では国の発展の進路は開けない、社会主義の道を探究しようではないか、という気運が大きな流れになっているのだと思います。
 これらの南米諸国の動きは、資本主義の世界的な矛盾がこれだけ深刻になっているもとで、社会主義の目標が、世界の人びとをひきつける新しい力をもちつつあることを、生きた姿であらわしています。私たち自身は、まさにこういう激動と変革の世界に生きているのです。(不破社研所長、しんぶん赤旗 08.11.11)

アジアでは

 アジアでは、この5年間にTAC(東南アジア友好協力条約)を中心とした平和流れが飛躍的にすすみました。TACはASEAN(東南アジア諸国連合)の国々が結んだ条約で、独立・主権の相互尊重、内政の不干渉、紛争の平和解決、武力の威嚇・行使の禁止などを取り決めた、いわば平和の共同体の条約です。はじめはASEAN域内で始まった条約でしたが、ASEANは88年に域外の国々に加入を呼びかけました。この呼びかけにこたえて、TACが飛躍的な発展をはじめたのが03年、すなわちイラク戦争の年で、この年に中国とインドが加入し、04年には、パキスタン、韓国、ロシア、そして日本も加入しました。そして現在、24カ国、37億人、世界人口の57%を擁する国々が加入する平和の共同体として発展を続けています。

 昨年の動きを見ますと、四つの国が新たに加入していますが、注目されるのはヨーロッパからフランスが加入したことです。フランス政府代表は、昨年のASEANの会議で、TAC加入にあたって「フランスはこの行為によってASEAN諸国への友好と友愛の証(あか)しとしたい」という印象的な演説をおこないました。かつての宗主国であるフランスが植民地支配をうけた国々と「友愛」と「平等」の精神で、平和の共同体をつくりつつあります。20世紀から21世紀にかけての世界の構造変化を象徴する出来事ではないでしょうか。

 イラク戦争から五年。世界の力関係は、大きく変わっています。戦争と平和という問題で、平和の力が、戦争の力を包囲する方向にさらに大きく変わりつつあります。(志位委員長、しんぶん赤旗 08.1.6)

ヨーロッパでは

 ドイツでは、旧西独地域のハンブルグ特別市議会選挙で、左翼党が比例議席獲得に必要な5%を超え初議席を獲得しました。左翼党は旧西独地域の州・特別市議会選挙で4回連続の議席を獲得し、州・特別市レベルでは全ドイツで第三党になっています。(しんぶん赤旗 08.2.26)

 ドイツの政治週刊誌「フォーカス」は「ソ連とその衛生国家がなくなった後、マルクスの唱えた社会的公正、階級の無い社会はユートピアに見えた。しかし、いまや、ドイツの政治状況に中で左翼党の結成や社会民主党の方向転換の模索が行なわれており、ドイツの革命家マルクスの思想はよみがえった」と述べています。マルクス記念館館長は「新自由主義は15年間の繁栄の後、もはや社会的合意にはなりえない。社会の矛盾が大きくなり、マルクスが象徴的人物としてまた時流に乗ってきた」と語りました。(しんぶん赤旗 08.3.20)