「労働契約承継法」は労働者切り捨ての悪法だ!
建機ビジネスセンター(播州工場)分社化
川重は2008年10月31日、来年4月に、建設機械ビジネスセンターを分社化し、川重、日立建機、TCMの3社で建機新会社を設立すると発表しました。
建設機械事業の提携とそれに伴う組織再編(会社分割)のお知らせ |
社外発表1週間後の11月6日に開催された臨時中央経営協議会で、川重から初めて労組に対し「建設機械事業に関する事業提携と組織再編に伴う従業員の転籍と労働条件の取扱い」についての提案が行われました。以下はその概要です。
会社提案の概要 (川重労組ニュース第1591号、2008.11.27より) |
11月28日に開催された臨時中央経営協議会では、川重より新会社への転籍時の労働条件詳細(人事、賃金、退職金、福利厚生等)について提案がありました。
1.基本的な考え方(川重労組ニュース第1593号、2008.12.15より) |
労働契約についての基本的考え方は労働契約承継法に則るとしています。2008年12月からは転籍対象となる従業員との個別協議が開始され、転籍の同意を確認するとのことですが、「法律的には、会社分割法制を用いるため、転籍に同意しない場合であっても、新会社へ転籍していただくことになる」という先に結論ありきの有無を言わさぬやり方です。これは日立建機との事業提携を最優先した、「第4次排ガス規制に対応する製品の共同開発」を急ぐためには労働者のことなど考えていられないという資本の論理を強制するものです。
大半の労働者にとっての最大の不安はこの先何処の職場で働くことになるのかということです。川重を志望して入社したのに日立建機やTCM(日立建機が50.1%を出資する子会社)という川重グループ以外の別会社へ半ば強制的に移籍させられ、3年後に日立建機グループになった場合、どこの事業所、工場へ行かされるのか分らないのです。
特に、2009年4月に入社内定の新入社員にとっては、川重に入社するはずが自分の志望とは違う新会社に入社することになるのではとても納得できないでしょう。
ところで、川重は表1のように2002年から本体の事業を矢継ぎ早に分離し分社化を推進してきています。
表1 川重の分社化の動き | ||
実施年月 | 川重から分離した部門 | 分社会社 |
2002年10月 | 船舶事業 | 川崎造船 |
2002年10月 | ガスタービン・機械事業・精機部門 | カワサキプレシジョンマシナリ |
2005年4月 | プラント・環境事業・プラント部門 | カワサキプラントシステムズ(KPS) |
2005年4月 | 車両事業・破砕機部門 | アーステクニカ |
2006年10月 | プラント・環境事業・環境部門 | カワサキ環境エンジニアリング(KEE) |
2007年4月 | (KEEとKPSが合併) | カワサキプラントシステムズ |
2008年4月 | (持分法適用関連会社連結子会社化) | アーステクニカ |
2009年4月? | 建設機械事業 | 建機新会社? |
出所:川崎重工業有価証券報告書(2008年3月期)より作成 |
資本がねらう分社化のメリットの一つは、分社後の労働条件を本体とは別に独自に決定し切り下げを容易にできるようにすることです。分社直後は労働契約承継法に従って本体の労働条件が維持されますが、その後は経営の独立性の名の下に新会社の労組との協議で労働条件を独自に決定(切り下げ)できるようになります。
分社化の行き着く先は川重本体の持ち株会社化です。本体から不採算事業を分離した後、分社会社が利益を上げれば存続させ、利益が出なければ事業からの撤退、事業売却となります。その結果、川重本体の利益は常に確保される一方、正規、非正規を問わず川重で働く労働者は切り捨てられるのです。
2001年から施行された労働契約承継法とは、企業が会社分割を行う場合に労働者の合意なしでも労働者をそっくり分割会社へ移すことを合法化した、企業がリストラを推進するための法律なのです。
(09.01.01)