労働ビッグバンって何?

 職場では、「少しばかりの残業手当でボロボロになるまで働き、行きついたところが、その少しばかりの残業手当まで取り上げようとする。それが、ホワイトカラーエグゼンプションですよ」という話し声が聞こえています。

 「労働ビッグバン」の名のもとに安倍自公内閣は、労働法制を改悪しようとしていますが、その「労働ビッグバン」とは何なのか?皆さんと考えてみたいと思います。

労働法制改悪内容とは)

 まず、労働法制改悪内容の骨子を下表にまとめました。
労働基準法改定 労働時間 一定のホワイトカラーを労働時間規制から除外
裁量労働制の対象労働者の条件を緩和
長時間労働者の残業割増率引き上げ
労働契約法
(新たに制定)
労働条件 ・労使が対等の立場で締結・変更
・合理的なものなら就業規制で変更できる
解雇 解雇の金銭解決制度は引き続き検討
有期雇用 不必要に短期の反復更新をしない
国の役割 周知のみ。労働基準監督官による監督指導はしない
                  (女性のひろば:2007.3.No337号より)

(一定のホワイトカラーを労働時間規制から除外とは)

 最近新聞紙上に「ホワイトカラーエグゼンプション」という英語が飛び交っていますが、「エグゼンプション」というのは日本語で「除外する」という意味です。

 つまり、この改悪内容は、「一定の」管理監督者の一歩手前の労働者から、1日8時間・週40時間という労働時間規制をなくし、残業代を支払わないばかりか、労働時間という概念まで無くしてしまおうとするものです。

(裁量労働制の対象労働者の条件を緩和とは)

 裁量労働制は、人や金を自らの裁量で動かすことが出来る上級管理者や、特殊専門分野・技術分野などの一般的管理ができにくい労働者などに、残業代を事前に決めた一定額が賃金に反映されている制度で、裁量権のないホワイトカラー労働者にまで適用されて、合法的なサービス残業の温床になっている制度です。

 残業目標を名目に(残業目標設定自体も違法)今でもホワイトカラー労働者は、サービス残業を強いられていますが、先の条件が緩和されるということは、裁量権のないホワイトカラー労働者に際限なく適用されることは明らかです。

 また、この制度を中小企業の労働者にも拡大しようとしています。

(長時間労働者の残業割増率引き上げとは)

 現状の労働基準法では、1日8時間、週40時間を越えて働かせる場合、使用者は労働者の代表と労使協定を結んで、25%以上50%以下の割増賃金を払わなければなりません。

 今回の改悪案は、ホワイトカラーエグゼンプション適用労働者以外の低賃金労働者には、割増さえ払えば際限の無い残業を強いることが合法化されますし、その適用割増・残業規定時間も労使協定を結べば、さらに改悪も可能な特別条項も含まれています。

 これでは、労使が協定して、厚生労働省に承認を得れば、過労死につながる時間外労働をさせても、許されることになります。

 必要なのは、時間外労働の上限規制こそ盛り込むべきではないのでしょうか。

(労働契約法の労働条件とは)

 労働条件を改悪することは、下記の最高裁判例でも認められていませんでした。
 (1) 労働条件を不利益に変更する就業規則改定は原則として無効であり、例外的に合理性のある場合に限り有効である。
 (2) その合理性については厳格な判断が必要であり、賃金や労働時間などとりわけ重要な労働条件については、会社存亡の危機など高度な必要性を判断すべきである。

 新たに制定する労働契約法では、本来例外である就業規則の改定による労働条件の変更を、労働条件決定の中心項目としています。

 これでは、使用者側からいつも一方的な就業規則切り下げ要請が、できるようになるのではないでしょうか。

(労働契約法の解雇の金銭解決制度とは)

 金銭解決制度とは、金さえ払えば労働者を自由に解雇できる制度です。

 労働政策審議会では、労働者側の反対で見送りとなりましたが、引き続き検討対象となっていることからして、予断を許さない状況です。

(有期雇用の不必要に短期の反復更新をしないとは)

 「不必要に短期の反復更新をしない」ということは、有期雇用の更新回数制限を行うということです。

 労働者側にとっては期待する向きもあったのですが、使用者側からの反発で審議事項からはずされてきいています。

(国の役割とは)

 労働契約法は、労働行政の役割を、ルールを周知させることに限定しています。

 それによって、労働基準法のもっている積極的な面、すなわち基準以下については処罰を前提にして権力的に介入することができる国の役割を弱め、労働行政を後退させる仕掛けがあることです。

(07.03.04)