一時金は増えましたか?

川重グループの一時金

 

 7月1日に行われたカワサキプラントシステムズの会社側回答「基準賃金×7.1ヶ月」で、川重グループの年間一時金交渉がほぼ出揃いました。カワサキプラントシステムズはまだ交渉継続中であることと、KPMと川崎造船は、業績連動期末手当て分が、未定のため年間一時金の額は現状では不明ですが、おおよその金額が出揃いました。その数字から見えてくるのは川重グループがあげている利益に対し、このたびの一時金は、労働者の苦労に報いるものとなっていません。以下にその中身を見ていきます。

 川崎重工は、2004年の賃金制度改悪[TAR-GET]により、一時金交渉はなくなり「業績連動制」になりました。2007年度の業績が確定した後の5月13日、早々と「労働協議会」にて会社より、年間一時金165万円との報告を労組は受けています。
 以下は、川重グループ各社の回答額と各カンパニーの業績を反映した、年間一時金の額です。

*以下のグラフは川崎重工の「期末決算説明会資料」をもとに作成した
注)川崎造船とKPMの業績連動期末手当は、参考値として昨年実績を記載した

(一時金は増えたか?)
 賃金制度が改悪された[TAR-GET]以降のここ数年、川重グループの業績は、右肩上がりで増えており、昨年度は連結経常利益640億円と2年連続で過去最高益を更新しています。

 川崎造船の労組委員長は5月27日の経営協議会で「会社幹部のご英断により『出せるときにはきちっと出す』との約束を守っていただき、組合員・従業員が『分社化されても頑張ってよかった』と思える額を出していただきました。組合員・従業員を代表してお礼申し上げます」と会社を最大限持ち上げた発言をしています。
 では、川重グループで働く労働者の年間一時金を含めた賃金は、この十年間増えたのでしょうか。川崎重工の過去10年間の一時金と平均基準賃金の推移を以下に調べてみました。

 以上を見るかぎり、川崎重工本体の年間一時金では11年前と同じ水準であり、この10年間まったく増えていません。一方平均基準賃金にいたっては、2004年を境に大きく減少し、減少傾向に歯止めがかかっていない状態です。

利益はどこに消えたか?)
 では、川重の労働者が生み出した利益はどこに消えたのでしょう? 好業績だったカワサキプラントシステムズでは川重本体よりも多い7.1ヶ月の年間一時金回答があり、現在も交渉中です。
 7月1日の労働協議会で、会社側代表の森田常務取締役は「当社の2007年度の純資産比率(=純資産/総資産)は好調な同業他社に比較してまだまだ十分な水準とは言えない。万が一の時のために耐えうる経営基盤を固めるために純資産比率を高め、経営環境を安定させたい。一方で将来のために内部留保を積み増した上で、労働組合にも川重グループでは初と言ってよい水準を用意させていただいた」と、破格の額を支払っていると言わんばかりの発言をしています。しかし、ここで注意しなければならないのは、利益がどこに消えたかです。図らずも会社側が本音を述べているように、「純資産」や「内部留保」を増やすために大半が消えているとしたら、それは許されるものではありません。
 実態はどうなのか川重グループの「純資産」である「自己資本」の推移と、借金である「有利子負債」の推移を見てみると以下のようになります。

 この10年間で、借金である「有利子負債」が約2200億円減少し、純資産である「自己資本」は約1500億円増やしています。また、2007年度の設備投資は505億円と、経常利益に迫る額を投資し、2008年度には1100億円もの巨額な設備投資計画を予定しています。これ以外にも利益の分配は株主への配当金や、「内部留保」にもまわされます。以上数字で見るかぎり、過去最高益の恩恵は川重で働く労働者ではなく、株主・資本家の方に行っているのが実態です。

 今日における川重の利益は、低賃金で働く派遣労働者や人員削減の中、事故やメンタルヘルスの危険と隣りあわせで働いている労働者が生みだしたものなのです。これらの労働者の願いに応えるためにも、派遣労働者を正社員にし、正規従業員には十分生活できる賃金を会社は支払うべきです。

(08.07.29)