安倍政権の新型コロナウィルス対応から見えてくるもの


読者の方から投稿がありましたので紹介します。

安倍首相は、2月27日夜、全国の小中高校などに対して、3月2日から春休みに入るまで新型コロナウィルスの感染拡大防止として、「全国一律の臨時休校」という極めて異例な要請をした。

この要請は、なんと専門家会議での議論もなしに、しかも、2月25日に政府が決定した新型コロナウィルス対策の「基本方針」にも盛り込まれていないもので、首相の独断だったという。株価と内閣支持率の急落に恐れおののいた起死回生の一手のつもりだったのか。

案の定、各自治体の首長や関係者から「場当たり的で唐突、想像力が感じられない」「許されない一律強制」「独裁的な行為だ」「人員対策なし無責任」「社会が崩壊しかねない」などと猛烈な批判と戸惑いの声が上がった。
それに慌てた首相は、28日の国会質疑で「要請にすぎず法的拘束力はない」「各学校、地域で柔軟にご判断いただきたい」と一転させた。日刊スポーツは、29日付で一面丸ごと使い、「コロコロコロナ対策 国民怒り沸騰 安倍政権ふざけるな!!」の大見出しでこの問題を報じた。

これまでの安倍政権の対応には、危機感や本気度がまったく感じられない。
中国で初めに感染者が発表されたのは昨年の12月初旬であり、武漢が封鎖されたのは1月23日であった。なのに、「感染症対策専門家会議」の第1回会合が2月16日とあまりにも遅く、安倍首相が出席したのは最初の3分だけであった。

同じ日に開かれた政府の対策本部の会議では、閣僚3人が欠席したという。それも、欠席した小泉環境相は地元の後援会の新年会に、森法相は地元の書道展の表彰式に、萩生田文科相は地元の消防団長の叙勲祝賀会に、それぞれ地元の行事に出席していたといういい加減さだ。

さらに、安倍首相が大規模なイベント自粛を呼びかけた26日には、秋葉首相補佐官が立食形式の政治資金パーティーを開き、その前日の夜には自民党の杉田水脈衆議院も同様のパーティーを開いていたという。人気アーティストが次々に公演を中止するさなか、感染拡大リスクの高い立食パーティーを率先して開いていたとは、危機管理の資格が問われる。

それでは2月25日に政府が決定した「基本方針」はどうなのか。
感染の拡大状況については、「一部地域には小規模患者クラスター(集団)が把握されている状態になった。しかし、現時点では、まだ大規模な感染拡大が認められている地域があるわけではない」ということだ。症状が出ているのにウィルス検査すらされておらず、まったく実態が把握されていないのに何を言っているのかと思ってしまう。感染拡大防止については、「重症者対策を中心とした医療提供態勢など必要な態勢を整える」というもので唖然としてしまう。また、この中で政府は、国民や患者、企業や医療機関にいろいろと求めているが、国が具体的に何をやるのか、果たすべき責任がほとんど示されていない。きわめて深刻である。

この「基本方針」の感染拡大防止に対して、26日放送の「羽鳥慎一モーニングショー」では、レギュラーコメンテーターの玉川氏が、「簡単に言いますと、軽症の人は診ませんって言ってるんです」「これはもう、医療崩壊でしょ」「重症化するまで診ないというのは、“みなさん重症化するまで待ってください”ってことです。そんな話ないでしょ」と怒りをぶちまけた。また、この番組では、PCR検査(微量の検体を高感度で検出する手法)が進まない実態に警鐘を鳴らし、その拡充と保険適用の緊急性を連日のように報道している。

PCR検査は感染拡大を防止するための早期診断と早期治療の要と言われ、26日の衆院予算委員会によると、18〜24日のPCR検査実績は計6300件(1日平均900件)だったということだ。安倍首相が見下す韓国では、トップが陣頭指揮し、PCR検査数は1日7500件で、3月からは1万3000件体制、14日以上の入院・隔離者には約12万円支給し、病院閉鎖は国が補償すると言っている。

日本でPCR検査が一向に進まない原因について、「日本は五輪のため感染者を少なく見せようとしている」という声が上がる一方、一部の感染症研究所OBが「ウィルス検査で得られるデータなどの情報、さらに検査に必要な予算を独り占め」しているからだという衝撃的な報道まで出ている。内科医の上昌広氏も「感染者を減らしたい官邸と、沢山検査したくない感染研・医系技官の思いが見事に一致しましたね」とツイートしている。どこまで腐りきっているのか。

肝心の新型コロナウィルス対策の予算措置と言えば、予備費が2743億円残っているのに、総事業費153億円という貧弱さである。しかし、安倍首相は「今の予算措置で対応は可能」とまで言い放った。国民にいろいろ要請するなら、政府が責任をもって十分な財政措置を取るべきである。

諸外国の対応を見ると、アメリカでは大統領が約2800億円の予算措置を議会に要求し、シンガポール政府は約5000億円、香港政府も約4300億円をそれぞれ経済的支援を含む対策費として投入すると発表している。

さらに驚くことに、28日に衆院本会議で可決した2020年度予算案には新型コロナウィルスの対策費が1円も計上されていないという。野党は対策費として約2500億円の抜本的な組み替え案を提出していたが、政府・与党はまったく無視して予算案の可決を強行した。

その中身と言えば、消費税増税で深刻な打撃を受けた国民のくらしや営業にはまったく目をくれず、相変わらず大企業優遇と大軍拡を推し進める最悪なものとなっている。なかでも、軍事費は8年連続増額し、アメリカからのF35B戦闘機6機(793億円)の「爆買い」など過去最大の5.3兆円とする一方、社会保障は高齢化にともなう「自然増」を約1200億円カットするなど極めて冷たいものだ。

ほかにもいろんな問題が表面化している。
新型コロナウィルスの対策として早期発見と的確な医療措置の重要性が増す中で、その基盤の貧弱さが浮き彫りになっている。国立感染症研究所の研究費が10年間で60億円から40億円に削減され、全国の保健所が850カ所(1990年)から472カ所(2019年)に減らされ、感染症対策の人員が削減されているというのだ。

さらに、厚労省は昨年9月、統廃合を求める424の公立・公的病院名を発表し、今年9月までに結論を出すよう迫っている。こんなことが実施されたなら、住民の命と健康、雇用に深刻な影響を与え、地域社会が崩壊しかねない。
国の安全保障というのなら、感染症対策の人員と地域医療の拡充にこそ力を入れるべきである。

また、感染が拡大する中で、自民党や維新の議員から、感染が疑われる人の移動制限や強制入院のために「緊急事態条項」を憲法に新設すべきだという発言まで出ている。これに対し安倍首相は、1月28日の衆院予算委員会で「大いに議論をすべきもの」と煽っている。国民が不安に思う問題を利用して改憲論議を進めようなどというのは、まさに火事場泥棒と言われても仕方ない。

ここまで安倍政権の対応を見てくると、いったい誰のための政治か、何を守ろうとしているのかがよく見えてくる。
国民の命とくらしにはまったく無頓着で、何よりもアメリカや財界・富裕層を大事する「お友達政治」であり、そして、自分の権力を守るために、国民の公僕であるべき官僚をその人事権を握って「安倍忖度」に変質させ、「桜を見る会」疑惑に限らず、公文書改ざん、森友・加計疑惑の真相隠し、自衛隊日報隠蔽、「働かせ方改革」のための労働データねつ造、帝国憲法の論理まで持ち出しての東京高検検事長の定年延長など、公私の区別もできず、ウソ・隠蔽・ごまかしを平気で繰り返すという戦後最悪の政権と言える。

このようにまったく信用ができない安倍政権に、新型コロナウィルスの対策や国の運営をこのまま任せてよいのだろうか。
2013年のオリンピック招致プレゼンでの安倍首相の「福島は完全にコントロールできている」というあの「迷言」が脳裏をよぎる。そして、新型コロナウィルス以上に安倍政権に対し、背筋が凍るような怖さと不安を感じる。

これを払しょくするには、一刻も早く安倍政権に退場してもらい、国民の命とくらし、個人の尊厳を何よりも大切にする野党連合政権の実現以外にないと確信する。

(K.T 記)


(20.03.02)