新中期経営計画で企業ビジョンは達成できるのか!

前中期経営計画目標のROIC9%→14%へ大幅アップ

1. 企業ビジョン
「世界の人々の豊かな生活と地球環境の未来に貢献する“Global Kawasaki”」
 川崎重工は、ホームページに2006年度〜2010年度の中期経営計画「Global K」を策定して発表しました。
 前中期経営計画は、投下資本利益率ROIC9%目標に対して2006年度の見通しは8%です。しかし、会社は、「さらに発展させるべく」ROIC目標を14%に大幅アップさせています。このROIC目標をアップさせることが「企業ビジョン」達成に繋がるのか、皆さんと考えてみたいと思います。

<改めてROICとは何か?>
 ROICとは、投下資本利益率といって下表に示す計算式によって算出される利益率のことです。つまり、このROICをアップさせるには、分母の「投下資本」をダウンするか、分子の「経常利益」をアップするしかありません。

◎ ROIC(投下資本利益率)とは

             当期経常利益
 ROIC(%)=−−−−−−−−−−−−−−×100
         投下資本(資本金、有利子負債)

◎ 経常利益とは
 経常利益=売上高−製品原価−管理費−営業外損益

<数量目標から見えてくることは何か?>
     

(億円)

 

2006年度
(見通し)

2008年度
(予想)

2010年度
(予想)

売上高

13,900

13,500

15,600

経常利益

400

550

900

ROIC

8%

10%

14%


 右表は、新中期経営計画が掲げる2010年度までの、ROIC数量目標値です。これらの目標値から読み取れることは、2006年度→2010年度で、「売上高」を1.12倍にしか予想していないのに対して、「経常利益」は2.25倍に予想していることからして、上表の不確定要素である「営業外損益」を除けば、「製品原価」「管理費」を大幅にダウンさせて「経常利益」をアップさせるか、または、「投下資本」を大幅にダウンさせるしかありません。しかし、会社は、「投下資本」の大幅ダウンを目標には掲げていません。

<どうしたら「製品原価」と「管理費」がダウンするのか?>
 現在、原材料・購入品市場は、高騰の一途をたどっています。この現状は、アップすることはあってもダウンすることはないというのが、大方の予想です。このことからして、「製品原価」をダウンさせる主要素は、下請け業者の単価と従業員の賃金をダウンさせるか、将来の上昇を抑えるしかありません。また、「管理費」ダウンも、直接生産に係わらない幹部職員も含めた従業員の賃金ダウンか、将来の上昇抑制が、主要素にならざるを得ません。

<ROICアップは企業ビジョン達成に繋がるのか?>
 ここで、改めて、職場の若者の「僕たちはTER-GETによって将来の賃金を抑えられ、成果主義によって競わされる。やってられないですよ!」という声、中高年の「仕事ではヘトヘト、生活はキュウキュウ、400億の経常利益を出した結果がこの状態か!」という声などと、企業ビジョンである「世界の人々の豊かな生活」に貢献するという目標が、リンクするのでしょうか?
従業員の生活が豊かにならないのに、なぜ、「世界の人々の豊かな生活」が達成できるのでしょうか?皆さんの意見をお待ちしています。 

(06.10.18)