新幹線「のぞみ」台車枠き裂問題
個人責任の追及ではなく、作業ミスを生みだした根本的原因の徹底究明を!
昨年12月、多くの命を乗せて猛スピードで走る新幹線の台車枠が、破断寸前であったことが判明し世間を震撼させました。
製造元の川崎重工は、2月28日に、この問題についてプレス発表し、同日に謝罪会見を開きました。これらに対し、新聞やネットでは「川重ずさん 現場任せ」「最も優先されるべき安全性がないがしろ」「現場の班長に責任を転嫁」等々の記事が数多く流れ、職場でも「がっかりした。本当に信頼回復できるのだろうか」「あの会見はすごく悲しい、班長の責任にするか」「外で川重の名前を出せない」等々の声が上がっています。
いま、川崎重工の経営陣は、今回の問題からどう教訓を引き出すかが厳しく問われています。その結果によっては、これからの新幹線の製造に留まらず、川崎重工全体のものづくりの未来を決めることになるでしょう。
経営陣は、今回の問題について、作業指示票の規定通りに作業をしていなかったことを原因の一つにして、当時の作業指示者をきつく問題にしています。
問題の台車枠を製造した2007年当時の兵庫工場は、高水準の操業に追われ、生産現場では工程が混乱していたと言われています。労働災害や精神疾患もとくに高い件数になっていました。また、社長の年頭挨拶では「ROIC9%以上の達成」が強調されていましたので、コストダウンと納期厳守がとりわけ厳しく求められたことが想像されます。
重大な作業ミスや事故というものは、それを誘発する幾重もの要因が積み重なって起きるものです。直接的な原因とされる作業ミスでも、それはさまざまな要因の結果に過ぎないことがしばしばです。個人責任とした再発防止では、管理強化策に走り、真の原因が隠れて問題をさらに深刻にする場合もあります。
ものづくりは各部門や協力会社などの多くの人たちの協働で行っており、これらを円滑に運ぶためには、設備や納期、人員、技術力向上などの経営施策が大きな要素となります。これらの問題を広く深く分析し、作業ミスを誘発した経営施策の経営責任を明確にして、根本的な原因を徹底的に究明することが必要ではないでしょうか。
そうすれば、きっと世間とものづくりに関わる人たちの共感を得ることができるでしょうし、「技術の企業集団」としての信頼回復の第一歩にもなることでしょう。
また、原因究明に際し、企業のチェック機能としての労働組合の果たすべき役割もきわめて重要です。労働者や協力会社に責任転嫁をさせないためにも、労働組合みずからが職場の声と英知を集め、原因究明に積極的乗り出すことが求められているのではないでしょうか。それによって、自由に意見を言える職場づくりや職場の連帯強化にもつながるでしょう。
【この問題に関し、2007年当時の状況も含めて情報提供をお待ちしております。】
(18.03.07)