川崎重工 大幅な減額となる「旅費規則における日当及び宿泊料の見直し」を提案  
肉体的精神的労苦や家族の負担などを考慮しない実費主義は、出張者のモチベーションを下げるだけでは?


8月24日の賃金専門委員会で、会社は「旅費規則における日当及び宿泊料の見直し」を提案しました。

改正理由として、「新型コロナウイルスの影響を受け営業利益は大幅な赤字となり…早急な業績回復と成長路線への回帰に向けては、固定費を中心とした各種収益改善施策を速やかに実施する必要がある」とし、「実費主義の更なる徹底」を図ると説明しています。

今回の提案内容は、いままで組合員の要求で勝ち取ってきたものを台無しにするようなもので、とても認められるものになっていません。

神戸から東京へ出張しても日当がゼロ、長期宿泊出張日当は半額!

今回の主な変更内容は、日帰り出張の距離区分を廃止し、出発、帰着時間により日当を支給するとし、宿泊出張・長期宿泊出張の日当を大幅に削減する内容となっています。

提案内容をよく読まないとわかりにくいのですが、例えば、神戸から東京への出張のケースで、6:00過ぎに出発して19:00前に帰着した場合、現状の3,350円の日当がゼロとなりますし、長期宿泊出張の日当は4,000円から2,000円の半額となります。また、旅費の幹部職員と一般従業員の支給区分も廃止・統合されています。

組合員から出された多くの不満

9月28日・29日に神戸工場・神戸本社で、この提案についての職場集会が開催され、数多くの組合員が参加し、次のような意見が出されました。

「長期宿泊日当について4,000円から半減は、急激で一方的な制度変更であり、会社提案の意図が理解できない」

「工事出張においては、いわゆる通常勤務とは異なる職場環境(騒音、粉塵、振動、高熱、有機溶剤等、臭気、汚損、安全遵守)で従事することがある。また、その環境下で川重の代表として安全、品質、工程に責任を持つ立場となり、複数の会社、従業員を統括する難易度の高い仕事に従事している。加えて、長期にわたり家族、同僚との通常のコミュニケーションが取りにくい環境で就業している状況も発生している。このような条件の下、労苦に報いる機能が日当に含まれている意識を組合員が持っていることは自然であり、会社職制も同様の理解だったのではないか」

「外部の専門家の意見も踏まえ協議に対応すべきではないか」

「長期出張することで持ち出しはあってはならない」等々

組合は、当初、2020年10月1日となっていた実施時期を、「職場の意見の吸い上げと組合員の理解を得る時間を十分に確保する必要があるため、会社の設定している実施時期での改正は難しい」として変更するように会社に要請しています。

長年の労使と労働者の日当水準の改善努力を台無しにする!

現在の日当は、2015年の春季要求の独自要求事項として、労組が「出張先でのストレスや不便さ」「消費税増税の影響」「(出張に際して)最大限のパフォーマンスを発揮する」などを理由に日当水準の改善を求め、会社は支給額は別として、基本的には要求根拠を認めた上で改善されたものです。そして、当時の労組は、「今回の要求は、1999年に改正されて以降、16年にわたり職場から届いた改善要望である」と強調しています。

今回の会社提案は、その経緯をなんら考慮することなく、出張に伴う肉体的精神的労苦や家族の負担などより、「早急な業績回復と成長路線への回帰」の方が大事と言わんばかりに、出張は「必要経費額」に極力切り下げると述べています。

いまコロナ禍での出張は、一層の負担を強いられるわけですから本来なら日当を増額してもよさそうなものです。この提案では、長期に渡る労使と労働者の日当水準の改善のために費やした努力さえも台無しにしてしまいますし、他の福利厚生などの手当ても見直すのではないかと心配になります。

経営努力のいらない安易な施策では、出張者のモチベーションを下げるだけになり、従業員にとっても会社にとっても得ることがないと思いますので、見直し提案の再検討が必要ではないでしょうか。

 


(20.10.19)