今回の「自民圧勝」といわれる選挙結果から見えてくるものは?

ひとつは大政党本位に民意をゆがめてしまう、小選挙区制の弊害についてです。
「自公合わせても小選挙区で五割を切り、比例ですら五割そこそこ。この事実を勝者も敗者も銘記すべきです」「圧勝を圧倒的支持と思ったら大間違いです」、「国民の支持率よりもはるかに水ぶくれした三分の二の勢力と強腰の首相が、国民支持を錯覚して独裁に陥らないことを願わずにいられません」と各社新聞も社説に書いています。

小選挙区制の害悪(4割台の得票で7割強の議席)

  自民党 民主党 共産党
得票率 47.8%(3252万票) 36.4%(2480万票) 7.3%
議席占有率 73%(219議席) 17.3%(52議席) 0%
得票率に比例した議席数 143議席(-76議席) 109議席(+57議席) 22議席

自民党に投票した人の中からも、小選挙区制によってつくられた"虚構で得た圧倒的多数"の議席に危惧する声が出ています。
「郵政だけでイエス・ノーを迫った論法で・・・最後にたたかうのか否かの二者択一の選択を迫って、軍隊を持つようになるのではないか、非常に怖い」、「あまりに極端な結果。皆がひとつの意見になったら戦中の大政翼賛会と一緒」、「独裁政治にならないかと不安」を訴える人もいます。
埼玉県の主婦が「郵政民営化反対だし、子供のために9条は守りたい。消費税増税も困るし・・・共産党をよく知って積極的に応援したい・・・夫は『赤軍派じゃないの』と言っていたが、勇気を出して恐る恐る電話しました」と共産党本部へ赤旗新聞購読を申し込んできました。
共産党の号外ビラを見て、今回の選挙結果に対し不安にかられての事でした。(「しんぶん赤旗」より) 

郵政民営化の本音は、どこにあるのでしょう

小泉首相と日米財界人の相思の関係にそれを見てとれます。
昨年11月、日米金融業会も参加した、日米財界人会議の共同声明では「郵貯・簡保が日本国民一般に全国一律サービスを提供し続ける必要はなく、本来的には廃止されるべきである」、「四つの郵政事業を四つの独立した法人に分離し、四つの郵政事業の間の相互補助を禁止する」ことをうたっています。「官から民へ」のひとつ覚えのスローガンがありますが、この「民」は日米の大企業である銀行と生命保険会社を指しています。
昨年8月、東京で開催された日米保険協定に基づく二国間協議の席上、アメリカ側は「簡保と民間事業者の間に存在する、不平等な競争条件をなくせ」とアメリカの保険会社より有利なものは、すべて取り払うよう要求しました。その後も日米首脳会議、財界人会議など更に露骨な要求が出されてきました。そのたびに小泉首相は「しっかりやっていきたい」と決意を表明しています。
また今年7月、日経連のシンクタンクである21世紀政策研究所が、財界関係者を集め開催した民営化推進のシンポジウムで、小泉首相は「多くの皆さんに激励していただいて、まことに心強い限り・・ぜひとも民営化を実現しなければならない意欲、情熱がわいてまいりました」と熱い思いを吐露しました。
小泉首相の豊田市入りには、日経連副会長でトヨタ自動車副会長が、鉢巻姿で出迎えるなど、連続的エールの交換が行われました。今までになく財界首脳が表舞台に立って応援した選挙でした。

これからの国会では暮らし・平和にかかわる法案が目白押しです

"虚構の圧倒的多数"と言われる上げ底議席を背景に、10月14日の参院本会議で、郵政民営化関連六法案が成立しました。法案成立前の共同通信社の世論調査では、郵政民営化法案を特別国会で「慎重に議論すべき」53.4%が、「成立させるべき」37.1%を上回っています。数を頼みに国民いじめの政治が強行されることに、国民は疑念を抱いています。
社会保障の分野では、障害者が福祉サービスを利用するほどに利用料が高くなる、障害者「自立支援」法案が、10月28日の衆院厚生労働委員会において、自公両党により可決されました。   
2006年度税制改正では、10月25日政府税制調査会の総会が開かれ、総会後の記者会見で石会長は、個人の所得税・住民税について「定率減税の廃止を延ばす根拠はない」として'07年度から廃止に踏み切る考えを表明しました。
消費税増税についても、来年始まる'07年度税制「改正」議論で増税を議論し、同年秋には結論を出す構えです。
一方でバブル期を上回る利益を上げている大企業への法人税減税を続けています。
自民・公明両党は争点隠しで選挙公約に一切上げなかった憲法問題では、改憲手続きを定めた国民投票法案を国会に提出することを確認し、衆院憲法特別委員会の設置を強行しました。
10月28日には自民党結党50周年に向けて作業していた「新憲法草案」を決定しました。政権党が初めて全条項にわたる改憲案をまとめたことで、憲法改悪の動きは、新たな段階に入りました。

政治は私たち国民の手にあるべきもの!

21世紀の主人公は国民です。憲法では(1)公務員を選定し及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。(2)すべての公務員は全体の奉仕者であり、一部の奉仕者ではない(15条)事をうたっています。
戦後60年、高学歴で社会に出た若者を待っているものは、好むと好まざるに関らず、その40%が正規社員の半分の給料で、企業が使い捨てのフリーターと呼ばれるものです。そして世代を問わない「過労死」、「サービス残業」という日本語が、不名誉な国際用語になっています。豊かな日本を支える国民が、年間4000人経済的理由で自殺しています。
戦後、自民党政府は憲法を踏みつけてきた挙句、古くなった、押付けの憲法だと、憲法改悪をしゃにむに進めようとしています。一部の奉仕者にだけ取り入り、全体の奉仕者として働かない政府には、私達国民固有の権利である公務員を罷免する権利によって、その意思を是非示したいものです。

(05.11.01)