経営トップが責任をとれ!

播磨工場/大型構造物ビジネスセンター事業再建の実態

播磨工場とその中の労働者は、4月末に会社より「鉄構ビジネスセンターにおける事業構造改革の推進について」提案を受けて、その後、大型構造物ビジネスセンターに改称され車両カンパニーへ編入、幹部職員を中心とした出向、少数組合員の他カンパニーへの転籍など、身も心も揺れ動いています。
この間、多数の組合員に対する会社の具体的な動きが見えなかったのですが、10月24日に開かれた臨時中央経営協議会で、その実態がはっきりしてきました。
この実態について「労組ニュース1510号」・「2004年5月改訂日本経済団体連合会:企業行動憲章」・「No.171号かわさき:大橋新社長メッセージ」・「2005年10月改訂コンプライアンスガイドブック」と職場の声をもとにしてながら、会社の動きや、経営トップの責任のあり方について考えてみたいと思います。

<労組ニュース1510号:臨時中央経営協議会での会社提案とは>
会社提案の配転人員・配転先カンパニー等は、以下の通りです。
配転先 転出元 異動時期 合計
05年11月 05年12月 06年1月 06年3月 06年4月 調整中
車両 大構BC     13       13
関係会社     9       9
本社 大構BC   1 9     23 33
関係会社   1       19 20
関係会社(Kプラント・他) 大構BC 1           1
関係会社         8   8
一般他社・他 大構BC 1   4 3     8
関係会社     2       2
小計 大構BC 2 1 26 3   23 55
関係会社   1 11   8 19 39
<調整中>
汎用機・航空宇宙・本社・川崎造船・KPM 大構BC           15 15
関係会社           13 13
 
合計 大構BC 2 1 26 3   38 70
関係会社   1 11   8 32 52
  2 2 37 3 8 70 122
(注1)2005年11月、12月の異動は幹部職員のみ。
(注2)川崎造船・KPM・Kプラントへの配転は転籍となる。ただし今年度は出向として取り扱う。

上表では、2005年11月以降から122名の転籍者を予定しています。しかし、今年4月25日の生産専門委員会での「鉄構ビジネスセンターにおける事業構造改革の推進について」という提案を受けた時点での人員計画は、2005年3月末で703名、2006年3月末で619名、2007年3月末で598名という計画で、削減合計人員数は105名でした。
大型構造物ビジネスセンターは、人員削減計画が公表されて以降のこの半年間に、橋梁談合事件・公共事業指名停止など、社会からの批判と社会的制裁を受けてきました。本来なら社会的責任を守らなかったことに対する責任問題が、クローズアップされるのが社会的一般常識であるし、コンプライアンス制度を持っていながら、それ自体を守らなかった企業としての謝罪と自主的な責任ある態度を社会に表明することが、まず経営トップとしての姿勢です。しかし、実態は、謝罪もせずまた、責任問題にも言及せずに、この機に乗じて幹部職員と組合員を予定以上に削減させ、「事業構造改革」を一気に進めようとする姿勢でした。
この姿勢に対して、職場では、「まず、経営トップが世間や従業員に謝罪すべきだ。そして、自らの責任問題を明確にしてから、従業員に協力を要請するのが本筋だ。」「談合という反社会的なことをして、そのことを逆手にと取ってより削減人員を増やすという姿勢は、従業員もやる気を無くすし、顧客からも見放されるよ。」という声が出ています。

<2004年5月改訂日本経済団体連合会:企業行動憲章での経営トップ責任とは>
日本経済団体連合会は、「企業行動憲章」と題して、「社会の信頼と共感を得るために」企業としての守るべき10原則を定めています。その10項目に以下の内容が書かれています。
「本憲章に反するような事態が発生したときは、経営トップ自らが問題解決にあたる姿勢を内外に明らかにし、原因究明、再発防止に努める。また、社会への迅速かつ的確な情報の公開と説明責任を遂行し、権限と責任を明確にした上、自らを含めて厳正な処分を行う。」
日本経済団体連合会に加盟する川崎重工は、この「企業行動憲章」を実行する義務があると共に、上記の行動を内外に示してこそ、「社会の信頼と共感を得るために」再出発することが、社会から認知されるのではないでしょうか。

<No.171号かわさき:大橋新社長メッセージが語る企業の社会的責任とは>
橋梁談合事件が発覚した後に発行された「かわさき:企業のコンプライアンスと社会的責任を果たそう」という中で大橋新社長は、以下のように語っています。
「コンプライアンスや企業の社会的責任についての認識は、経営層、幹部職員、従業員といった各位各層において個人差があり、・・・中略・・・この認識の個人差が意外な落とし穴となって、思わぬ会社の不祥事に発展する可能性を秘めているのです。」「・・・あらゆる局面で法令遵守は全てのことに優先します。法律に違反したり、社会的ルールを無視した企業活動は無意味であることを全従業員が肝に銘じるよう要請します。」「企業の社会的責任ということが言われていますが、社会は企業に、優れた製品やサービスと、経営の健全性・透明性を求めるほか、地球環境保全への取り組み、雇用の確保、倫理観など、企業を総合的に評価します。」

大橋新社長のメッセージから伝わってくるものは、経営トップとして犯した罪を自ら真摯に謝罪するのではなく、橋梁談合事件の原因が「経営層、幹部職員、従業員」の「認識の個人差」であるかのように語り、「全従業員が肝に銘じるよう要請」などと、全従業員の責任でもあるかのように語る、自らの責任放棄の姿勢です。
事実、その後の会社の行動は、幹部職員全員への直筆誓約書の提出・コンプライアンスガイドブック改訂版の配布・独占禁止法遵守ガイドブックの配布・組合員への教育などであり、社会への謝罪表明はありません。
法律に違反しないように全従業員を啓蒙することは大切ですが、それによって、経営トップとしての監督責任が免れるものではありません。

<2005年10月改訂コンプライアンスガイドブックについて>
コンプライアンスガイドブックは、目次の後に以下の内容が強調されています。
「この冊子で説明する事項の多くは、犯した個人が個別の法律によって裁かれるものですが、次のとおり事態はそれに止まりません。・・・中略・・・2.会社は、株主代表訴訟のリスクにさらされることを避けるため、事件により被った損害を事件を起こした個人に請求する。」
職場では、「橋梁談合事件からの教訓として改訂されたと思っていたが、何だかあの事件は個人の問題のように受け取れるな」という声が出ています。
また、「制度の手続きおよびルール」の中で、「B報告・相談内容の事実確認・回答が出来ませんので、報告・相談は実名によるもの以外は窓口の段階で受け付ません。」と書かれていますが、この点に対して、職場では、「普通は、内部告発が匿名だから言えるのに、実名を記載しろと言われたら誰も告発なんか出来ないよ」という声も出ています。

<経営トップは、何をやるべきなのか>
経営トップは、談合事件発覚前の事業再建計画をどんな状況になろうとも確実に遂行しようとしています。増してや、談合事件を従業員全員の責任問題にして、事業計画再建に利用している姿勢に対しては、怒りを禁じ得ません。
経営トップは、日本経済団体連合会の「企業行動憲章」にも述べられているように、「経営トップ自らが問題解決にあたる姿勢を内外に明らかにし、・・・中略・・・自らを含めて厳正な処分を行う。」ことから、まずスタートすべきではないでしょうか。その真摯な姿勢こそが、社会の人々の「信頼と共感」を得ることになるのではないでしょうか。

(05.11.30)