―社長就任挨拶― |
6月28日に開催された定期株主総会後の取締役会において、大橋社長が第13代目の社長に選任され、「かわさき−171」7月号にて社長就任の挨拶を述べています。就任以来旧鉄構ビジネスセンターを大型構造物ビジネスセンターに改編し、車両カンパニーに組み込むなどやつぎばやに施策を打ち出していますが、その内容は一人ひとりの労働者が誇りをもって働けるものなのか、また大橋社長の言う「世界に誇れる会社になりうる」ものなのかどうか考えてみたいと思います。
「21世紀を生きるグローバル・カワサキをめざして」のスローガンを見出しに掲げ、社長は、川重の100年の歴史に触れ「当社の長い歴史の中で個々の事業を見てみますと、次々と新しい事業を生み出すと同時に、一方では消滅していった事業や製品もあり、その時代の要求や経済・社会環境に応じて企業内で内部淘汰が行われながら、川崎重工グループ全体として生き続けてきました。これは歴史的に見て、当社が社内ベンチャービジネスの集合体であり、これからもそうでなければ持続的成長はない証といえます」と述べ、これまで幾度となく行ってきた不採算部門の切捨てや人員削減を正当化しています。経営が悪化したとき川重の歴代経営者が行ってきたのは、労働者に犠牲を転嫁する合理化でした。その結果70年代に3万6000人いた従業員は、現在1万人余りにまで減少しています。過去にあった特別人員対策では個人に対し何度も退職勧奨が行われ4500人もの働く仲間が職場をおわれました。これは労働者の犠牲の上に利益を上げてきた歴史の証明であり、決して「ベンチャービジネスの集合体」などと言えるものではありません。
さらに当面の経営目標として「活力にあふれた収益力のある会社」、「信頼感のあるkawasakiブランドの構築をめざす」と述べ、これまで田ア社長の下ですすめてきた『構造改革』(分社化や、賃金制度の改悪など)を切れ目のないよう推進すると表明しています。この『構造改革』の最後の仕上げとして鉄構橋梁事業の分社化が今行われようとしています。談合事件を契機に一気に分社化の動きが加速していますが、談合は業界ぐるみで会社の経営者が行ったものです。会社はまたしても分社化など労働者の犠牲で乗り切ろうとしていますが働く労働者には何の責任もありません。今回の談合事件のほかに川重グループがこれまでおこなった反社会的な事件は、「ごみ焼却炉の談合事件」、「日本飛行機の水増し請求事件」、「フィリピン実習生への未払い賃金事件」などがありますが、最近になって「アスベスト被害の事件」が明らかになるなど、反社会的事件があとを絶ちません。このたび経営トップに就任した大橋社長は、法令遵守と情報開示をするよう述べてはいるものの、これら過去の事件に対する反省はなく、会社としての社会的責任も認めていません。
大橋社長が言う「グローバル・カワサキ」をめざすためには、過去に行ったこれらの反社会的な行為に対し、情報を開示し、会社として真摯に反省し、社会的責任を果たすべきです。また「今後は従来以上に『事業の収益率』『製品の利益率』に軸足を置き収益力を強化する」とも述べていますが、金儲けに奔走するだけでは世界から認められるはずがありません。もっと労働者に軸足をおき、一人ひとりの労働者を大切にし、高い技術力を創出する企業であってこそ、企業価値を高め世界から認められる企業になれるのです。
(05.08.14)