シンポジウム「造船・海運と地域社会」に参加してきました

 読者の方からシンポジウム「造船・海運と地域社会」の感想をいただきましたので紹介します。


 12月12日に長田勤労市民センターで開かれたシンポジウム「造船・海運と地域社会」に参加しての感想です。このシンポジウムは、三菱重工が神戸造船所から商船建造を撤退すると発表した問題について、その見直しを求めるために「神戸に造船を残す連絡会」が呼びかけたものです。当日は約200名もの人が参加しました。

 全日本造船機械労働組合三菱重工支部の久村信政書記長の基調報告に続いて、柴田悦子大阪市立大学名誉教授と日本共産党の穀田恵二衆院議員、金沢治美神戸市議から報告や問題提起があり、最後にパネルディスカッションがありました。

 私は、造船に携わっていることもあり、特に造船業と海運業についての柴田教授の報告が一番印象に残りました。柴田氏は、船舶大型化のためのパナマ運河の拡張工事の問題に触れ、「国際物量を見る限り、造船の縮小はない。物の流れが多くなればなるほど船が必要」と強調されました。今まで、大量解雇や震災による神戸の商船建造一時休止等を経験しましたが、大量輸送には船が一番の手段との話しを聞いて、"造船の仕事が無くなることはない"との思いを強く持ちました。

 三菱の下請の社長が青年をたくさん連れて参加され、「かつての造船不況の中で40代、50代の労働者が育っていない中で、若い人たちが頑張って一人前になろうとしている時に、造船から撤退することは若い芽を摘むことになる。このような状況で結婚しろとか、子供を作れとは到底言えない。」との発言を聞いて心に詰まるものがありました。

 三菱神戸での商船建造は、105年の歴史があり、市民を招待しての進水式も恒例の行事として根付いています。造船の仕事が無くなったわけでもないのに利益を拡大するために、下請や関連企業、労働者と家族、地域社会を犠牲にすることは間違っています。
今回のシンポジウムに参加して、三菱神戸からの商船建造撤退が社会的にも大きな影響を与えることを痛感しました。

 三菱は「龍馬伝」でNHKに対して、三菱創始者である岩崎弥太郎像が食い違っていると抗議したそうですが、この撤退問題はそれ以上に恥ずかしいことではないでしょうか。

川重造船労働者より


(10.12.25)