厚生労働省主催「過労死等防止対策推進シンポジウム」参加報告


読者の方から投稿がありましたので紹介します。

於いて:神戸市産業振興センター ハーバーホール(2022年11月18日(金))

1.挨拶
最初に兵庫労働局鈴木一光局長から主催者挨拶があり、続いて兵庫県を代表して片山安孝副知事が過労死等は、ご本人やご遺族をはじめ、職場の同僚、地域のつながりなど、影響は計り知れないことを訴えられ、このシンポジウムが過労死等を無くす取り組みの推進につながるようにお願いしますと挨拶されました。神戸市の大畑公平経済観光局長から過労死等の問題を重要なテーマに取り組んでいる旨の挨拶があり、兵庫県、神戸市としても過労死等の問題を大きな問題としていることが良くわかりました。

2.基調講演
長年、過労死事件を取材してこられた中部剛氏(神戸新聞社文化部長兼論説委員)の基調講演があり、過労死について

との説明があり、官民合わせた労災・公務災害の認定件数の紹介や、過労死等を他人ごとにせず、自分の会社、自分の家族の問題として考えること、新しい過労死問題としてテレワークメンタルヘルス、フリーランス(業務委託契約を結んだ相手方)に対する安全配慮義務(フリーランス保護)の問題についてなど説明と報告がありました。

3.兵庫労働局からの報告
過労死等とは「つまり、死亡・生存を問わず、長時間労働やパワハラなどにより、脳内出血や心筋梗塞、うつ病などを発症すること」、令和3年度の過労死等と認められた労働者の数は兵庫県58人、全国801人との報告があました。また、過労死等の労災認定された内訳については

と精神障害に関するものが4倍以上になっていること。
総合労働相談件数(4万7,494件)のトップは「いじめ・嫌がらせ」(20.2%)で10年連続であること。などの報告がありました。

4.企業からの事例発表
「社員と家族のために」を第一に考え、働きやすい職場づくりを進めている事業者の方から、この取り組みをはじめてから、従業員が3倍、女性従業員がゼロから3分の2に激増し、売り上げも倍増しているとの事例報告がありました。ちなみにこの事業者は、「従業員」と呼ばずに、敬意を込めて「スタッフ」と呼んでいるそうです。

5.過労死遺族の声
『過労自死遺族として今思うこと』と題して、地元企業で働いていたご主人を過労死で失ったご遺族からの訴えがありました。

神戸市にある日本を代表するグローバル機械メーカーA社に勤務していた夫が、2013年4月に中国合弁企業B社に出向となり、その3ヶ月後の7月に赴任先の自宅マンションから、飛び降り自死した。私と幼い子供2人を残して、享年35歳でした。

出向前の健康診断で「要精検査」「条件付き赴任可」と診断されていたが、A社は夫の健康診断結果を本人に知らせず、何も対応しないまま赴任させたこと。赴任先では、本来2人で予定していた業務を1人ですることになったこと、加えて中国のB社との間で頻発していた、専門知識を多分に要する担当外の装置のトラブル対応にもあたることになったこと。この、担当外のトラブル続発の為、本来業務の滞留によって業務を大量に抱えることとなり、家族から切り離された異国の地で、孤独にもがき苦しみ、うつ病を発症した夫は、まさに仕事によって自死に追い込まれたのです。

夫の自死の原因は、仕事以外考えられず、2015年2月に神戸東労働基準監督署に労災申請をし、2016年3月に自殺と業務の因果関係が認められ労災認定になったこと。

私のような思いをする遺族がこれ以上増えないよう、会社には、海外出向をさせる従業員の語学能力や、生活環境に十分に配慮し、出向後も安全配慮義務を軽視せず、海外出向者が抱える業務上のストレス、及び、生活上のストレスに注意していただきたいです。仕事が原因で命が無くなるような事は絶対にあってはなりません。と訴えられました。

訴えの中では、中国赴任の直前の3月下旬、この時までにとらないといけない勤続10年のリフレッシュ休暇を取得し、家族で沖縄旅行に行き幼い子供たちとの最後の楽しい旅行となったこと。
日に日に元気も表情もなくなった夫が7月6日「子守唄を歌ってくれ」と言うので、疲れているのだと思い、私は、ゆりかごの歌を歌いました。亡くなる前日の夜会話をし、一度画面が切れ、もう一度夫から電話がかかり、顔を見ておやすみなさいと会話したのが、私達夫婦の最後となりました。

会場は静まり、参加者はご遺族の悲痛の訴えに聞きいっていました。

6.閉会挨拶
藤原精吾氏(過労死等防止対策推進兵庫センター共同代表)より、過労死ご遺族の訴えは胸詰まるものがあった、過労死等は企業が作り出している、参加された企業の皆さんは、過労死等を無くすために取り組んでいただきたい旨の閉会の挨拶がありました。

最後に
この日、12時から13時の間にJR神戸駅北側で「川崎重工業(株)中国出向エンジニア過労死事件のご遺族を支える会」が、チラシの配布と神戸地裁向け要請の署名活動を行い。用意したチラシが無くなり、予想を超える署名が集まったとのことです。この過労死事件に関する注目が高く、川重の対応に「こんなことを許してはアカン」などの励ましの声が寄せられたとのことです。

(M.I 記)


(22.11.22)