『兵庫県弁護士9条の会第18回定期総会 記念講演
「戦争ではなく平和の準備を -抑止力で戦争は防げない-」を聴講しました』
読者の方から投稿がありましたので紹介します。
4月15日に憲法学者の青井未帆氏(学習院大学法科大学院教授、憲法学専攻)の講演会が神戸の“あすてっぷKOBE”で開催され、聴講しました。
講演では、日本の安保政策に関する現状の確認から始まり、昨年12月に閣議決定された安保3文書改定の位置付けと改定内容の確認、憲法の観点からの問題点の指摘、最後に今後の平和構想の提言がありました。講演内容は、私には少々理解が追いつかない処もあったのですが、共感するところや多くの気付きも得られ、講演を聴講してとても良かったです。
日本国憲法(特に9条)のもと、戦力不保持、専守防衛を旨とする「平和国家」観であったものが、 “いつの間にか” 「他国防衛のために先制攻撃にさえなりうる攻撃が憲法上可能」な状態になってしまっている。こうした憲法改正に匹敵する大きな変更が、それに見合う議論がない(国会閉会後の閣議決定=国会軽視も甚だしい、国民的議論なし)まま、なされていっている。かつて、日本が “いつの間にか” 政治が統制不能になり、高度国防体制に国民生活の全ての部面が巻き込まれた挙句に戦争・崩壊した事実を思い起こし、「議論できない国会にもっと敏感であるべき」との氏の指摘に共感しました。
また、このような事実上の日本の安保政策の大転換に対し、岸田首相の「憲法、国際法の範囲内で行うものであり、非核三原則や専主防衛の堅持、平和国家としての我が国としての歩みを、いささかも変えるものではない」(2023年1月23日施政方針演説)との言明は、明らかな欺瞞である との指摘にも強く共感しました。同時に、変えているのに「変えていない」と言えば通用してしまっている昨今の政治の現状を変えるためには、政治や、政治家の言動を常にウオッチ(監視)し、問題があれば声を上げる国民が増えることがどうしても必要であると思いました。
講演の最後に氏より、政府は安保政策と憲法との整合性に対する憲法論はすでに「決着済み」とし、政府憲法解釈として狭い独自解釈をとることで、安保政策の国際法や憲法との抵触を回避しているので、この範疇での議論は難しくなっており、9条の根本精神・目的を踏まえた広い視野での、国家と市民がアクターとなる「地に足のついた」多面的、重層的な安全保障(=平和構想)を考えていく必要がある との提言がありました。現政府の抑止力一辺倒の思想とは違う、深い理性的な考え方に非常に感銘を受けました。
【参考】 青井教授は「平和構想研究会」(https://heiwakosoken.org/)の共同座長をされています。
(S.I記)
(23.04.20)