「103万円の壁」「130万円の壁」


A子 「困ったわ。12月は、パートの時間を調節しなくちゃ。」
B子 「どうして」
A子 「だって、いつものように働いたら、103万円を超えてしまうから。
103万円を超えたら、夫の所得税の配偶者控除を使えなくなるの。」
B子 「そうだったわね。C子さんは、夏の忙しい時に頑張って収入が130万円を超えてしまったために、配偶者控除どころか夫の健康保険の家族からも外されて、年金も自分で払うことになったそうよ。すごい負担になったと聞いたわ。」
A子 「そうなのよ。少しでも多くと思って働くことがよけいに出費が増えてしまうなんておかしいわ。」

1.「103万円の壁」「130万円の壁」
 パートで働く妻たちは、年収が103万円未満となるように働き方を調整しています。
 なぜなら、103万円を超えると、夫の所得税の配偶者控除を使えなくなり、妻自身にも課税されるからです。夫の会社によっては、配偶者手当が出ない場合もあるといいます。

 サラリーマン世帯の専業主婦がパートで働く場合は、上の「103万円の壁」を乗り越えても、年収130万円未満で抑える人が多くいます。健康保険の扶養家族になるとともに、保険料を納めなくても済む基礎年金を受給できる国民年金の「第3号被保険者」として、経費を抑えることができるからです。
 つまり、主婦の働き方を抑える原因となっているのは、この「103万円の壁」、「130万円の壁」なのです。

2.「130万円の壁」から「106万円の壁」へ
 2012年に法律が改正となり、新たにパート労働者約25万人を対象とする適用拡大が2016年10月に施行されます。
 これによって保険料を納めなくて済む「130万円の壁」が106万円に引き下げられます。現在年収106万円から130万円の人たちに厚生年金を適用すると、医療と合わせて保険料で月々1万円以上の出費になると予想され、家計が圧迫されます。
 適用が拡大されると「もっと働きたい」と思っても保険料負担を避けるために、さらに労働時間を短時間に抑えることが考えられます。

3.次は「103万円の壁」から「0円の壁」へ検討始まる
 安倍首相は今年3月配偶者控除の見直しを政府に指示しました。「見直し」とは具体的に配偶者控除の廃止を意味すると考えて差し支えありません。政府自民党は「女性の社会進出を促進するため」と称していますが、果たしてそうでしょうか。
 配偶者控除はまだ専業主婦が多かった時代、「内助の功」に報いる趣旨で始められました。やがて家計の助けなどの理由で多くの専業主婦がパート・アルバイトで働くようになりましたが、当初考えられていた年収103万円を超えるようになってきたことで、それが労働時間を抑えるテコとして働くようになったのです。
 しかし配偶者控除の廃止で女性が働きやすくなるのでしょうか。答えはNOです。
 理由のひとつは低賃金です。
 仮の計算ですが、今年の全国平均最低賃金は時間当たり780円。これで週6時間、5日/週、年間48週働くと年収112.3万円です。このような低賃金を放置したままでは税負担が増えるだけです。ここは税負担をはるかに上回る賃金アップを行なわないと解決できません。
 もうひとつの問題は子育て支援の環境が改善されていないことです。0歳児保育や児童保育を受けられない多くの子供たちがいます。それが改善されないと女性の進出など絵に描いた餅でしかありません。

14.12.20)