川崎重工の2016春闘を考える

ちょっと待って!
221億円損失はベースアップ要求拒否、低額回答の理由にはなりませんよ!

1.2016春闘直前の221億円損失発表に対する職場の声

 川重は2016年1月14日ブラジルでの造船合弁事業で221億円の損失を計上することを発表しました。
 併せて、船舶海洋カンパニー村上彰男プレジデントが引責辞任し、後任には餅田義典同バイスプレジデントが昇格、配当金1株7円(中間配当含め12円)維持の予定も発表しました。
 会社によると損失計上は、ブラジル合弁会社エンセアーダから受注したドリルシップ建造工事への入金が1年以上中断、今後も入金の見込みがないためとのことです。

 職場では損失額の多さへの驚きに加え、春闘直前の発表に
「ベースアップ要求拒否、低額回答の理由にしようとしているのでは?」 との声が上がっています

2.2014春闘の低額回答の手法を振り返る

 2014春闘を少し振り返ります。会社はベースアップ3,500円要求を、高水準の有利子負債を理由に1,000円の低額回答で押し切りました。その経過は一昨年ホームページ上で紹介しましたが、概略次の通りでした。
  ・ 2014春闘は2014年2月7日、ベースアップ3,500円要求提出で始まる。
  ・ 会社は交渉当初からベースアップに応じられない、その理由としてまだ確定していない途中段階の高水準有利子負債を主張。
  ・ 約1カ月後の3月12日、1,000円の低額回答で2014春闘は終結。
  ・ その後、会社は2013年度決算(期間2013年4月1日から2014年3月31日)を
高水準有利子負債は無かったかのように 、有利子負債400億円削減を発表。
  ・ この経過から、会社は有利子負債削減ができることを知っていながら、途中段階の高水準有利子負債をベースアップ低額回答に利用した疑念が生じた。

 会社はいまだに有利子負債が春闘終結後に改善した理由を説明していません。

 参考に有利子負債の推移を図1に示しました。春闘直前の第3四半期は高水準になり決算で改善される、毎年起きていることです。このことから、私たちは高水準有利子負債を「低額回答もやむえない」雰囲気づくりに利用した疑念を持っています。

3.2016春闘、川重はベースアップ4,000円の十分な体力も持っている 

 2016春闘は2月12日の要求提出で始まりました。ちなみに、ベースアップ要求は4,000円です。

 さて、会社は2016春闘をどんな手法、論理で乗り切ろうとするでしょうか?
 破たんした、"高水準有利子負債"論は使えないでしょうから、221億円損失計上を理由にすることが考えられます。

 そこで、今春闘での会社の負担増はいくらか?
 その負担増に会社は耐えられるのか?の考察を紹介します。

・4,000円のベースアップによる必要経費は10億円
 2014春闘で会社はベースアップ3,500円の経費を年間約9億円と試算しています。
 今春闘の要求額4,000円を比例試算すると約10億円ですが、会社はこの10億円を負担できる体力があるのでしょうか?

・会社の体力考察
 その1: 株配当1円の活用で6,500円可能

 今年度の配当金は1株当たり12円、1円当たり約16.7億円です。仮に、12円の配当を11円にして、1円分16.7億円をベースアップに活用すれば約6,500円アップが可能です。

 その2: 221億円の損失計上しても、当期の純利益の2%活用で可能
 今年度の純利益は、221億円の損失計上で下方修正しても450億円もあります。これを全てベースアップに活用すれば約175,000円ですが、450億円の2%程度を活用すれば4,000円アップは可能です。

皆さん  以上のことから、会社は4,000円ベースアップに応える体力は勿論、それ以上の要求にもこたえられる体力を十分持っていると考えます。

皆さん  職場で、労組で、大いにその根拠を語っていきましょう。そして、満額回答の実現を目指しましょう。

(16.02.13)