第5章 日本の制度と大企業の思惑−世界とは異質な日本的労働慣行・労働法

第5章では、「労働市場の二重性(常用雇用と不安定雇用)は何故生じるのか?」について話し合われました。

Eさん:著者は、「戦前から既に、基幹労働(常用労働)と縁辺労働(不安定労働)という、労働の二重性が現れていました。」と書いているけど、今の派遣労働は、戦前と同じではないか。
Jさん:斡旋業者が縁辺労働に関わり、人買いなどの人間性を認めない状態があった。戦後、著者が書いている「1985年から1990年代前半の政府・経営者の雇用政策の中心課題は、女性や一部の業務を正社員から派遣労働や有期雇用に転換して『縁辺労働市場』に追いやることでした。」というように、戦前の状態が復活している。
Dさん:本来短期雇用自体、悪いものではない。労働者が昔の女工哀史のように会社に取り込まれ監禁状態で、働かされないように自由に職を変えられることが出来るのは良いと思う。しかし、ヨーロッパ・アメリカのように同一労働・同一賃金での短期雇用ではない状態の日本は、短期雇用だけを切り取られて、企業に悪用されている。
Aさん:著者は、「バブル経済の崩壊後、1990年代後半から政府・財界は『市場原理主義』への傾斜を強めます。雇用・労働分野でも、その中心は、従来の日本型雇用慣行を全面的に見直すことでした。過度な雇用保障や労働関連の規制が自由な市場を阻害しているとし、労働法や労働協約の規制撤廃を主張したのです。実際には、経営者だけが法規制から自由になって、思い通りに振る舞えるようにしたいというのが本音でした。・・・その綱領的文書となったのが、日経連が1995年に提言した、『新時代の日本的経営』でした、そこでは雇用を1.長期蓄積能力活用型、2.高度専門能力活用型、3.雇用柔軟型の三グループに分けるという提案です。2・3の有期雇用を軸に雇用を流動化させ、1の正規雇用は縮減するという方向でした。」と書いているけど、この提案が大きい。

◎目からウロコその5:今の派遣労働は、戦前と同じ!