「はぐるま」 2018年 秋季号
NO.237



戸倉峠(M.F)
Contents
 川崎重工・車両事業「場合によっては事業の撤退を含め」検討!?
 すべての人を技術・技能と共に人間的にも「育てる」企業に!
 広がる“パワハラ” 職場はどうなる!?
 大河
 就業規則と労働協約に解雇事由の追加等が提案
 65歳まで定年延長は従業員にプラスか?
 会社が各所属長に通達「事務・技術職の労働時間管理徹底について」 
 「N700系新幹線台車枠の製造不備について」川崎重工がプレス発表
 「かわさき239」(2018年9月)のSDGsとは?
 読者の広場
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川崎重工・車両事業
「場合によっては事業の撤退を含め」検討!?


「川重、鉄道車両事業撤退も」 新聞各社が一斉報道(10月31日)

新幹線の台車枠き裂問題があっただけに、「えっ、どういうことや」「そんなバカな」「社長の出身母体をやめたらあかんやろ」などと職場に衝撃が走りました。

車両カンパニープレジデントは、「自助努力での再建が十分に可能と確信しています」と発信

従業員の不安を心配したプレジデントは、「自助努力」で大丈夫だと力強く表明し、今回の採算悪化については、いさぎよく「経営陣として深く反省し、責任を感じています」と述べています。その通りだと思います。

自助努力でだめなら、「他社との提携」や「撤退」などという社長の発言は、あまりにも無責任では?

10月30日発表の中間連結決算概要には、車両事業の国内・海外の需要は安定的あるいは増加と述べています。車両は環境に優しいので、造船と同様に未来ある成長産業です。

それなのに、社長は、車両事業再建委員会が設置された早々の10月30日の記者会見で、自助努力が「不可能となった場合」のことを論じています。ここは、進退をかけて頑張るというのが社長ではないでしょうか。

経営陣は危機感ばかりをあおるのではなく、先を見据え持続的に発展できる経営施策を!

会社は、社長名で11月1日、信頼回復に向け「一人一人が、危機感をもって」頑張れと全従業員に号令をかけています。いま必要なことは、もっと先を見据え、すばらしいものづくりを目指して、持続的に発展できる経営施策を提示すべきではないでしょうか。




すべての人を技術・技能と共に人間的にも「育てる」企業に!


あの『下町ロケット』の放送が3年ぶりにお茶の間に帰ってきました。

「何より人の役に立つものをつくりたい」「会社だって人と同じさ。損得以前に相手のことを思いやる気持ちとか、尊敬の念を持つとか、そういうことが大事なのではないか」・・・ものづくり魂を熱くさせます。川重もこのような会社にできないかと考えてみました。

「もう耐えられないので退職します」 離職者が急増

職場の現実は、「上司のパワハラに耐えられない」「自分の能力を発揮できない」「品質を軽んじてる」等々。夢と希望を持って入社したはずの青年が次々と退職しています。

「会社としても想定を上回る自己都合退職率となっており、優秀な人財の流出を危惧する」これは船舶海洋C経営協議会での会社説明です。

いま離職者だけでなく、精神疾患の増加も深刻です。なぜなのでしょうか。

人財を単なる利潤追求の労働力にしていませんか?

会社は、「従業員はもっとも重要な財産」であり「人財」と表現していますが、問題は本当の人財として育てきれていないことです。原因として、少なくとも次の二つことが考えられます。

①人財に必要なお金をかけていない
従業員の平均年収は20年前と比べ減少、70年代・80年代は経営悪化を理由に大量の人員削減と長期の新規採用の抑制、2000年代に入り非正規雇用への大規模な置換、育成より即戦力ということで中途採用の大規模な拡大など、人件費の削減ばかりです。

②人事政策の基本が個人の尊重になっていない
欧米は一人ひとりの能力を把握し、それを生かすのが人事政策の主流ですが、日本の大企業は、労働者の全生活を企業の枠内に閉じ込め、労働組合を企業の利益に従属させるなどの労務管理が主となっています。根本は、非正規雇用の待遇に見られるように労働者を人間として扱っていないことです。

すべての人を人間として尊重し、大切に「育てる」ことが、強靭で、すばらしい仕事ができる会社にする

企業が社会に貢献しながら持続的に発展していくには、どうしても前述の二つの問題を解決し、技術・技能と協働の能力を持つ自立した人財を、絶えず育てていく必要があります。

そのためには、健康で文化的な生活を送れる賃金と労働条件に、差別的な雇用をやめて雇用は正社員に、そして、労働者を分断させる人事制度の廃止など、すべての人を人間として尊重することだと思います。

そうすれば、どのような時代の変化にも対応できる強靭で、すばらしい仕事ができる会社になるのではないでしょうか。



 広がる“パワハラ” 職場はどうなる!?

以下は、党委員会に寄せられた告発・相談からの抜粋です。

「研究開発や設計職場の中には、若い人達への厳しい上司の叱責・暴言や、仕事のミスを会議で発表する見せしめ的行為が散見される」

「派遣で働いていたが、仕事で人格を否定され体を壊して休んでいる間に、契約切れで退職させられた。就活はおろか立ち直れない」

「職場で怪我をしたら、上長から『労災とちがうやろなー』と怒鳴られ病院にも行けなかった」

「お前達は障害者や、お前達より優秀な奴はいっぱいおる。辞めてもらっても代わりはいくらでもいる」

「所属長が仕事を取り込んで手放さず、教えてもくれない、上司と話し合ったが解決しない、我慢の限界なので退職する」

「仕事に将来性がないと同期が転職していく、今日も送別会、自分も転職が頭をよぎる」

【大河】

沖縄知事選挙は、安倍政権が官邸主導で、権力を総動員して「辺野古ノー」の声を押しつぶそうとしましたが、逆に県民の強い批判と怒りを呼び起こし、玉城デニー氏が知事選で過去最多となる得票で圧勝しました。

安倍首相は、選挙後、沖縄の民意にまったく耳を傾けることなく、普天間基地の辺野古への移設で、「基地負担の軽減に努めていく」と述べました。

そもそも普天間基地は、米軍による民有地の強制接収でつくられ、「世界一危険」な基地と呼ばれています。その基地を無条件で撤去・返還せよという当然の民意に対し、政府は、アメリカに何ら要求もせず、代わりとして大幅に機能強化する耐用年数200年の新基地を提供しようというもので、それは県民に新たな負担を強いるものです。なのに、安倍首相は平気で「軽減」と呼んでいます。

全国の米軍専用施設の約7割が沖縄に集中し、沖縄本島では約15%の面積が占められ、それが経済発展の障害にもなっています。朝鮮半島での平和の激動の中で、基地強化が進められています。

いま問われているものは、新基地の是非だけでなく、日本という国の民主主義であり、地方自治であり、そして、人間らしく生きるという個人の尊厳を謳う日本国憲法そのものでしょう。

この問題の解決への大きな希望は、知事選での「オール沖縄」の勝利であり、リスペクト精神で大義の旗を掲げた市民と野党の共闘ではないでしょうか。




就業規則と労働協約に解雇事由の追加等が提案



9月の労働専門委員会で、解雇・懲戒処分等に関する就業規則の改正と労働協約の改正が提案されました。とくに大きな問題は、解雇事由に、「周囲との協調性を著しく欠き、正常な業務運営を阻害しているとき」を追加する点です。

生活の糧を奪う解雇事由の追加は慎重に行うべきでは

従業員は一定の基準をパスして入社しており、生活と人生を左右する解雇は極めて慎重であるべきです。また、行動規範には、「従業員の多様性を尊重し、様々な価値観と能力、各人が培った経験を受け入れ・活かす職場作りに努めています」とあるわけですから、解雇ではなく、本人の個性を尊重しながら、会社と職場でしっかり教育し、育てることだと思います。

忖度(そんたく)と萎縮がはびこる職場にならないか

「周囲との協調性」というあいまいな事由は、上司や同僚との意見の相違も、運用次第で協調性がないと判断されかねません。「一人一人が役職に関係なく、お互いを尊重し合い」という社長の考えにも反するのではないでしょうか。

重大な解雇に労働組合が関与できないのでは

労働者の生存権に関わる解雇問題には、すべて組合が関与すべきです。労働協約の改正案の全文が公表されていないので、組合の関与の有無が不明ですが、職場でよく議論しましょう。



65歳まで定年延長は従業員にプラスか?



9月に定年延長の提案があり、19年4月1日より実施予定となっています。

政府と財界の政策に追随

安倍首相は、「人生百年時代」を見据えて高齢者の雇用延長が今後の重要課題と表明し、年金支給も70歳に延長しようとしています。

63歳定年のまま、延長希望者には現行条件の改善で対応できないか

従業員の中には、「退職金は早くもらいたい」などの声があり、退職金の先送りは生活設計を狂わせます。

今の63歳定年のまま、「定年時の職級資格」「過去3年以内に病気休職や病気欠勤、事故欠勤を行ったことがない者」などの採用条件の撤廃、賃金の減額の廃止等、今の制度の改善で十分だと思います。

退職時期が延びるだけ、定年後の自由な時間が少なくなります。「高齢者が無理して働かなくても暮らしていける社会」に転換することが必要ではないでしょうか。

会社が各所属長に通達 「事務・技術職の労働時間管理徹底について」(8月1日)

通達は、「従業員に適正な申告を行うよう指示するとともに、適正な申告を阻害する措置を講じないこと」「不適切な労働時間管理については、決して認められるものではありません。これらは場合によっては懲戒処分の対象となり得る」などの内容となっています。

賃金不払労働(サービス残業)は、労働基準法違反の犯罪であり、「6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金」が科せられます(「はぐるま」2012年5月号外:HP参照)。

会社は、所属長のみなさんを犯罪者にさせてはなりません。そういう点で、今回の通達はたいへんもっともなことで、徹底してもらいたいと思います。

「N700系新幹線台車枠の製造不備について」 川崎重工がプレス発表(9月28日)

発表によると、「製造不備」の原因は「過度な製造現場依存」と「不具合を未然に防止するためのリスク管理不足」であり、その再発防止として、「KPSを徹底導入するなど、業務プロセスの見直し」「リスク管理の強化」等の品質管理の是正策として4点があげられています。

気になるのは、原因究明が経営施策の問題をさておいて、現場の個人の作業ミスに焦点が当たり、その結果、「製造現場の経験や勘に依存しない」「誰が行っても同じ品質が確保できる」仕組みづくりなど、管理強化策となっていることです。それでは、一人ひとりの技術・技能が育つのか、また、作業者も上司も管理業務に追われ、問題が別の形となって表れないかなど心配です。

「かわさき239」(2018年9月)のSDGsとは?

そもそもSDGs(持続可能な開発目標)とは、2015年9月の国連において、2015年から2030年までの長期的な開発のための指針として掲げられたもので、17項目あります。この目標は、貧困に終止符をうち、地球を保護し、すべての人が平和で豊かさを享受できることをめざしています。

とくに8項目めには、「すべての人のための持続的、包摂的かつ持続可能な経済成長、生産的な完全雇用およびディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を推進する」という重要な内容が含まれています。

長時間労働、「カロー死」をなくすことは、SDGsが推進するディーセント・ワークを実現する重要な視点です。大きな社会的責任を持つ大企業が、もうけのところだけをつまみ食いするのはいかがなものでしょうか。


読者の広場 
ヘリポートで地域に貢献
明石工場のほぼ中央にヘリポートがあります。時々利用しているようですが、中にはドクターヘリの利用もあるようです。こうした地域に貢献できることを増やして欲しいと思います。
(Drへり男)
防災訓練
防災訓練では、地震と津波と火災発生。火災が起きたら、防火扉が締まるし、スプリンクラーが作動する。どうやって逃げるのか、心配だ。訓練では、三階に集まって点呼。でも下には逃げられないでしょ。どうやって逃げるのかな。
(本社・A子)
動物園
11月3日(土)川重恒例行事の王子動物園に孫を連れて久しぶりに行きました。

孫に手渡されたお菓子セットは種類も多く、孫、長男夫婦も大満足でした。

白熊は高齢で水中にダイブ出来ず、パンダもお尻を向けてお休みと、動物園にも高齢化が迫っていることを思った一日でした。
(神戸パンダ)
ほんとに?
車両事業からの撤退ニュースにビックリ。社長の出身母体なのに、切っちゃて良いの?

西神戸工場は、人手が足りず休みも返上して、皆さん大忙しなのに。かつて、西神戸も社名が変更させられた時が有りましたが、兵庫工場の人達は、さぞ不安でしょうね。

社歌の「あー陸に海に空に」えーと何作ってる会社だっけ?ってなりますね。
(デニー玉津)
車両応援メッセージ
「川崎重工、鉄道事業から撤退も視野」との各社の一斉報道で驚きました。新幹線や通勤電車で川崎重工製を見ると嬉しくなります。

環境面でも車両事業はこれから期待され伸びると思います。将来を見据えて全社を上げて車両事業を継続発展させて欲しいです。
(がんばれ兵庫!)
経営陣様、もっと危機感を持ってください
職場の体質としてマンパワーに頼りすぎていると感じています。仕事ができる人に業務が集中し、結果的に仕事が回っているように見えますが、最終的にはできる人が疲れきってしまい、退職してしまうということが頻繁に起こっているように見受けられます。

原因として、仕事を割り振るべき上司がその職務を怠っていると感じています。会社の経営陣は、そのような実態に危機感を持っているのでしょうか。
(機械くん)
美味しい洋菓子
精密機械BCは、今年50周年を迎えました。記念品として、有名な美味しい洋菓子の詰合せを、精密機械BCで働く全従業員に配付されました。流石、太っ腹です!

同じカンパニーのロボットBCの皆さんには残念ながら 無かったそうです(泣)。11月18日には、50周年記念祭が有り、約2000人近くが参加するとか、凄いです。
(バームクーヘン)


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