川崎重工 2021年 株主総会
メンタル疾患への取り組み、航空宇宙システムカンパニーの「派遣切り」についての質問と回答


第198期定時株主総会は、6月25日(金)に神戸国際会館で開催されました。

今回も、コロナ禍での開催という理由で、株主の来場者は76名(昨年74名)、開催時間は10時から11時まで、質問は一人一問にそれぞれ限定されました。

質問者は5名(昨年4名)でした。その中から、企業の社会的責任に関わるメンタル疾患への取り組みと航空宇宙システムカンパニーの「派遣切り」についての質問と会社回答を紹介します。

メンタル疾患への取り組みについて
【株主質問】
常に私は従業員は企業の宝だと思っております。そこで従業員のメンタル疾患についてお尋ねします。川崎重工は常に安全健康を第一のモットーとしております。安全健康第一で、全ての従業員が定年を迎えることを望んでおります。
残念ながら当社の報告によりますと、昨年11月時点で284人、前年度の254人に比べ約12%の増加となっています。そこで質問ですが、現時点で従業員のメンタル疾患の方は、何人いますでしょうか? また、それに対する川崎重工の対応はどのようにしているのでしょうか。

【会社回答】
メンタルヘルス対策というのは、経営の根幹に関わる重要な課題と捉えております。そして、過重労働に伴う健康障害については、厚生労働省の指針である四つのケア ― セルフケア、財務ケア、スタッフケアそして内部ケアといった四つのケアを柱とするメンタルケア対策の実施に取り組んでいます。
今何件かというご質問について、2020年のメンタル関連疾患の休業件数は303人です。これは前年度から11%増加していますが、他社企業と比べた場合、当社は決して多いとは言えないレベルと考えておりますが、やはり前に申しあげた四つのケアといったものに重点的に取り組んでいきたいと考えております。
 
会社全体としまして、社員が生き生きと、ストレスを感じることなく出来る環境を大事にしようと思っております。残念ながら昨年度はコロナ禍の中で、全社としても非常に厳しい環境の中で、仕事をするという状況でありましたので、そういった中で新しく上司と部下との対話、その他を含めまして部下のケアをしていくということを幹部としまして、しっかりと対応していきたいと思っています。

【株主質問】
他社は関係ないんです。川崎重工として、こういうメンタルケアをして減らしていくというのが大事なのです。


【会社回答】
はい、そうでございまして、しっかり対応していきたいと思います。 
 
航空宇宙システムカンパニーの「派遣切り」について 
【株主質問】
航空宇宙システムカンパニーの「派遣切り」について質問します。昨年の11月2日の事業方針説明会において、航空宇宙システムカンパニーでは、航空機事業の人員を2020年度中に600人縮小するために、社員200人を一時的に他部門に配置転換し、派遣社員400人は契約更新しないと発表しました。
コロナの感染拡大によって、今後失業者が何百万人も発生すると予想される中で、厚生労働省および経団連が「雇用維持」に取り組むよう要請しているにもかかわらず、「派遣切り」を行ったことは派遣労働者とその家族の生活基盤を奪い、地域社会にも深刻な影響を及ぼします。厚労省・経団連の要請があるにも関わらず、経営者はなぜ「派遣切り」を行ったのか。あわせてもう一点、今回、全社で何人の派遣労働者を雇い止めにしたのか、お答えください。

【会社回答】
ご存知のようにコロナ禍にあって、民間航空機の需要が急減しました。ボーイングおよびエンジンを含めて、生産量がほとんど半減に落ち込んでしまう事態になりました。我々として、国の指導もあり、雇用維持をまず第一に全社をあげて受け入れ先の検討を行い、今も200名近い生産職を、他カンパニーおよび他社に出向という形で受け入れて頂いています。それでも生産の急激な激減に耐え切れず、一時昨年の前半は雇用調整助成金もいただいて、一時帰休の措置もしてまいりましたが、更なる減産を受けて、まことに遺憾でございましたが、派遣の契約満了をもってお引き取りいただいたのは、事実でございます。
今民間航空の事業は、国際旅客運送協会の見通しですと、先程社長からご説明がありました通り、2024年に向けの回復基調に合わせまして、また生産を立て直し、そのコロナの先にはまたリバウンドの需要があると思っております。そういう意味においては、近い将来そうした経験を持った派遣の方をまた雇う機会がくることを望んでいますし、是非そうして行きたいと思っています。事業継続の中において、非常につらい判断でございましたが、派遣の方に一時お引き取り頂いた、そういうことです。一日も早くコロナからの脱却と民間航空事業の再建に最善を尽くしてまいりたいと思っています。

何人の雇止めをしたのかというご質問ですが、具体的人数については回答を控えさせていただきたい。先程の説明でもありますように、今回は各期間の満了をもって、実施したということでございまして、このコロナ禍において、契約期間の途中での雇止めということはしておりません。そのことだけは申し添えさせていただきたいと思います。
 


【メンタル疾患の問題】
会社は、メンタルヘルス対策について、「経営の根幹に関わる重要な課題と捉えております」と回答しています。その通りだと思いますが、大事なことは、これまでの対策ではメンタル疾患の増加傾向に歯止めがかかっていないということ、その点を直視し、徹底した根本原因の究明とそれにもとづく対策が必要だということです。

メンタル疾患者数は、死亡退職者数や離職者数とともに、企業の健全さを示すバロメーターだと思います。メンタル疾患を徹底して抑え、持続的に発展できる企業にするためには、職場環境が、適正な要員が確保され、自由に意見が言えて働きやすい環境になっているのか、雇用形態に関わりなく助け合う風土がつくられているのかなどを、まず点検してみることが大切だと思います。

【「派遣切り」の問題】
会社の回答は、昨年(MC&Eカンパニーの「派遣切り」)と同様に、コロナ禍の影響で需要が激減したために「派遣の契約満了」をもって雇い止めしたというものです。

厚労省や経団連が、コロナ禍で極めて厳しい経済環境ゆえに、体力のある大企業に「雇用維持」を要請しているのに、需要が減ったので雇い止めし、リバウンド需要のときはまた雇うなどと言っています。その間、派遣の方がどのようにして暮らすのかなど、まったく考慮もしない身勝手過ぎる言い分です。

雇用情勢が厳しいときこそ、内部留保の活用も含め、あらゆる手立てを尽くして「雇用維持」を図るのが大企業の社会的責任だと思います。

派遣の方を景気の「調整弁」のように扱って、果たして戻って来てくれるのかわかりませんし、技術・技能の低下は避けられないでしょう。

参考: 2020年の株主総会での質問と回答はこちらをクリックしてください。


(21.07.31)