川崎重工 2023年 株主総会
中国出向エンジニア過労死裁判に関する質問が相次ぐ |
第200期定時株主総会は、6月28日(水)に神戸国際会館こくさいホールで開催されました。
会社発表では、来場した株主は213名(昨年は135名)開催時間は10時から11時38分までで、質問はそれぞれ一人2問に限定されました。
会社側からの事業や業績についての報告と説明などに続き、事前の質問5件に加えて、来場者7人(昨年5人)からの質問に会社が回答しました。その中から、中国出向エンジニア過労死事件とパワハラ、メンタルヘルスへの取り組みなどについての質問と会社回答を紹介します。
中国出向エンジニア過労死事件について |
【株主質問】
川崎重工中国出向エンジニア過労死裁判に関して、昨年の6月の株主総会で社長は、自死された中国出向エンジニアのご遺族へは、家族の育英と家庭生活の安定を図るべく経済面での補助を継続していますと発言しておられたが、しかし川崎重工は争議に入ったことで、配偶者とお子様への「育英扶助年金」の支給を4月で打ち切っています。なぜ社長は虚偽の報告をされたのか。
【会社回答】
去年の私がお話しした時点までは、育英資金は確実にお支払いして約10年間家族に寄り添ってお払いしてきました。ただし裁判に入りましたので弊社のルールに従ってこういった形になったことをお話しさせていただきます。
【株主質問】
産業医から健康状態に問題ありとの所見が出たのに出張させたことは明らかに健康保持義務違反であり、また出張者に健康診断の結果を知らせず放置したことはコンプライアンス違反だと思います。
【会社回答】
亡くなられた言うことは事実でございますが、過労であるあるいは事故であると言うことに関しては裁判の中で明らかにさせていただく。
【株主質問】
労災が認められているにもかかわらず会社は、会社には落ち度がないとの立場で話し合いも謝罪も何も応じない。海外の企業に出向させ単身で海外に赴任させうつ病を患い自死した痛ましい事故です。会社内で業務に関わる事故は会社に責任があることは間違いのないことです。もう一度確認したい、あの事故は会社には責任がないという立場なのか。
【会社回答】
前回の株主総会でも話したけれどもこの事案が発生して以来ご家族に対して一貫して誠意を持って対応してきている。裁判になり、昨年の4月で打ち切って6月に最終的な年金をさせていただくと言う形になったが、2013年から約10年間、育英資金はご家族に寄り添ってしっかり対応してきた。裁判で主張されていることに関しましては、裁判の中で事実関係を元に誠心誠意しっかりご対応していくというのが我々の基本である。この詳細に関しましては裁判で述べることが必要であると考えておりここではご発言は控えさせていただきたい。
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パワハラとメンタルヘルス疾患の増加の問題について
【株主質問】
メンタル疾患は、これは最悪の場合自死に繋がってまいります。川重の昨年のメンタル疾患は346件です。一昨年と比べて6%増加している、こういう報告がされており、このようなメンタル疾患は個人の努力や責任では解決できないという問題があります。昨年の株主総会で4つのケアに会社は全力をあげると言われましたけれども、この問題を本当にどのように改善していこうとしているのか実効ある具体策をお聞かせ願いたいと思います。
【会社回答】
厚生労働省が推進しています4つのケアを柱とした基本方針と言うのを作成して対応しておりますけれどもなかなか減らないというのが実情です。ただ今年度からはこう言った方針を再度見直して、セルフケアで本人の気づきを大切にして具体的対応を重視していくという観点からセルフケアにたいするリーフレットを作成して全従業員に配布する予定でいる。こういった取り組みによって心の健康増進に取り組む。ハラスメントは人格権の侵害であり職場におけるハラスメントを一掃するためにハラスメント宣言と言うのを実施している。悩みを抱えている従業員が気軽に相談できる窓口というものを開設して相談しやすい環境を整えている。またハラスメントの疑いがある場合には迅速な解決に向けて全力をあげて取り組んでいる。 |
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【中国出向エンジニア過労死事件について】
「はぐるま」2022年 夏季号NO.252でも問題を指摘しましたが、川重はご遺族に対して育英扶助年金支給は、6月15日付け書面において4月分で打ち切ると通知しています。
昨年6月24日の株主総会の「残されたご家族の育英と家庭生活の安定をはかるべく、経済面での補助を継続しています」との橋本康彦社長の発言は、年金支給の停止を通知した後であり「継続している」との発言は、明らかに虚偽の発言で許されません。
そもそも労災で一家の働き手を失くした遺族に対し、裁判と育英扶助年金支給を対峙させることこそ問題です。社長は規則で支給を停止したと弁解していますが、「育英と家庭生活の安定のため」の支給であるなら係争とは無関係なはずです。このような規則こそ問題なのです。この川重の対応には、お金を出すから川重の責任を問うな、ダメならお金は出さないと、お金でご遺族を黙らせようとする姿勢がありありと現れています。
川重が過労死を出しておきながら裁判で争う道を選んだことは、社会的責任への自覚が欠けていると言わざるを得ません。
出向前の健康診断で産業医から再検査の所見が出ていたのを本人に知らせず、そのまま海外赴任させたことは明らかな健康保持義務違反であり、そのコンプライアンス違反との指摘に一切回答を避ける姿勢こそ問題だと考えます。
【パワハラとメンタルヘルス疾患の増加の問題について】
出張や海外への赴任も含めて、会社内や業務に関わる労働災害、メンタル疾患、過労死等は会社の責任です。
個人の努力や責任では解決できないという問題があるのではとの指摘に何も答えておられないし、リーフレットを配布し各自読んでおきなさい、悩みが有ったら窓口に相談しなさいとの対応は個人に責任を押し付け、会社としての健康で安心して働ける職場環境を整備する責任を放棄しているとしか見えません。職場の実態をよく把握するなど会社としてのパワハラやメンタル疾患を無くすための積極的な取り組みが必要なのではないでしょうか。
参考: 2022年の株主総会での質問と回答はこちらをクリックしてください。
(23.07.06)