初任給の改定、特別習熟加算は何を意味するか

−「TAR-GET」による低賃金がもたらす矛盾−

 川重は今年度(2008年度)の初任給をアップするとともに、若年層の賃金に対して「特別習熟加算」と称する賃上げを行いました。
 この流れは10月に行われる事務技術職の職級R1、R2の賃上げと同じで、世間に比べて低い賃金をもはや維持できないと判断した会社の手直し策です。

 このように賃上げをせざるを得ない背景には、好景気によって人手不足が目立ってきたことと、同時に進行している「2007年問題」と呼ばれる大量の定年退職者を補充する必要に迫られていることなど、新卒者を中心に相対的な「売り手市場」になっていることが挙げられます。

 では具体的にどのような賃上げが行われるのか、以下の表を見ていただきたいと思います。

初任給:
  増額
大学院 228,500 224,000 4,500
大学 205,500 202,000 3,500
高専・短大 185,000 184,000 1,000
高校 163,000 161,000 2,000

特別習熟加算(1)−主に2007年度入社:
職能資格 G1 G2 G3
事務技術職
(院卒・大卒・高専卒)
- 1,400 1,900
生産職(高卒) 700 - -

特別習熟加算(2)−主に2007年度以前入社:
対象者  
大卒事務技術職で、2007年10月にG3に昇進した者 9,200
高専卒事務技術職で、職能資格G3の者 9,200
高専卒事務技術職で、標準年齢22歳以上の職能資格G2の者 14,030

R系列(事務技術職):
    増額
R2  58歳以降 334,090 324,090 10,000
58歳まで 346.920 336,920 10,000
R1 58歳以降 249,040 228,980 20,060
58歳まで 261,870 241,870 20,000

 今年度の初任給の世間水準は、民間調査機関である(財)労務行政研究所が東証第1部上場企業214社について調査した結果では、大学卒で204,333円,高校卒で162,241円となり、昨年度に比べ,それぞれ1500円・0.7%、897円・0.6%上昇しています。
 従って大企業である川重でも世間並みの賃金に合わせせざるを得なかったと判断されます。

 さて、初任給と特別習熟加算の関連を見ると、初任給を大幅にアップしたために2006年度および2007年度に定期入社した人よりも賃金が高くなってしまうことが特別加算の理由として考えられます。しかも高専卒で標準年齢22歳(入社後2年)の賃金が今年度入社の大卒・院卒よりもかなり低くなることから、対象者には14,030円もの加算を行う必要が生じています。
 つまり川重の賃金は「世間水準に比べて低い」ということが、R系列賃金ともあいまって明るみになったのです。
 そしてその原因は、日本共産党川崎重工委員会ホームページで過去に取り上げた記事(「R系列の賃金改定」 07.07.04)にもあるように、「TAR-GET」で大幅賃下げを行ったことです。

 しかし川重はこの問題に対して、一時しのぎの「特別加算」で乗り切ろうとしています。差が目立つ若年層や「中だるみ」と呼ばれるR系列の層にだけ手直しするだけで、G系列、S系列の生産職や60歳以上の「エルダー階層」は置き去りにされています。
 会社側はR系列の見直しに関する提示文書の中で「当社の賃金水準が業界の中で満足できるレベルであるかの検証は今後も必要」としていますが、まるでモグラ叩きのような手直しの繰り返しでは根本的な解決になりません。
 やはり根源にある「TAR-GET」という、低賃金を固定化する制度を止めない限り、世間並みの賃金すら確保できない状態は続きます。

(08.08.25)