「はぐるま」 2020年 春季号
NO.243



佐用町・乙大木谷の棚田(M.F)
Contents
 川重明石工場 MC&E カンパニー 5月末に「派遣切り」
 正規社員と非正規労働者(パート・有期雇用・派遣)との「不合理な待遇差」を禁止する法律が4月1日施行
 大河
 “賃金は「固定費」なので賃上げはガマンせよ” え! これっていいの?
 新入社員の皆さんへ 
 読者の広場
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川重明石工場 MC&E カンパニー 5月末に「派遣切り」
「総合技術力で社会貢献できないか検討を進めて」いる企業のやることでしょうか?



いま日本が戦後最悪の深刻な感染症とのたたかいの最中に、明石工場のモーターサイクル&エンジンカンパニーは、これまで「カワサキ・ブランド」を一緒に支えてきた派遣労働者を、5月末と6月末で雇止めにしようとしています。

日本経済は、消費税増税による打撃に加えコロナの感染拡大によって、今後、失業者が何百万人も発生すると予想されるなど、危機的事態に突入しています。

そのもとで、厚生労働省は、3月に2度にわたり日本経済団体連合会に対し、派遣労働者等の「雇用の安定とその保護を図る」ことを要請しています。そして、経団連も各会員企業に「雇用維持」に取り組むよう要請しています。

脆弱な体力で雇用維持に頑張っている中小企業がいる中で、しかも、国と経団連の要請にも応じず、リーディングカンパニーと呼ばれる川崎重工が、「派遣切り」を行うなどということは決して許されるものではありません。

それは、コロナ収束に向けた国民の結束した努力に水を差し、深刻化する日本経済と失業増加に拍車をかけ、そして、派遣労働者とその家族の生活基盤を奪い、地域社会にも深刻な影響を及ぼすことになります。

これまで、川崎重工は、緊急事態宣言を受けて、派遣社員も含め、従業員とその家族の健康を優先して、テレワークや勤務形態の柔軟な対応などに取り組んできました。

これらの努力を台無しにすることなく、社長が「当社グループの総合技術力で社会貢献できないか検討を進めて」いると語っているように、いまこそ、豊富に持つ技術力・資金力・人財力・ネットワークを生かし、雇用確保や医療支援などの社会的責任を果たすときではないでしょうか。




正規社員と非正規労働者(パート・有期雇用・派遣)との「不合理な待遇差」を禁止する法律が4月1日施行



非正規労働者全般に関する改正

過去幾度となく苦境の中に立たされてきた非正規労働者ですが、ようやく労働者のたたかいもあって「同一労働同一賃金」に関する法律(「働き方改革」一括法㊟)が施行されました。不十分な点もありますが、待遇の改善につながる次の条項が含まれています。

①不合理な待遇差の禁止
②待遇差に関する説明義務
③行政による事業主への助言、指導や裁判をせずに労使紛争を解決する手続きの整備

㊟8本の法律の改正を一括したもので、労働基準法、労働安全衛生法、労働者派遣法、労働契約法等の改正が入っている。

派遣労働者に関する改正

1.不合理な待遇差をなくすための規定の整備
 
①派遣元が講ずべき措置
(派遣元は次の方式で賃金、賞与、交通費、退職金を決定する。)

【派遣先均等・均衡方式】
派遣先の通常の労働者との均等・均衡待遇

【労使協定方式】
一定の要件を満たす労使協定による待遇

②派遣先が講ずべき措置
派遣先労働者と同様に必要な教育訓練を実施する
派遣先労働者が利用する食堂・休憩所・更衣室も同様に利用機会を与える

2.派遣労働者の待遇に関する説明義務の強化 
①雇い入れ時の明示・説明
②派遣時の明示・説明
③派遣労働者の求めに応じ説明をする

3.裁判外紛争解決手続き(行政ADR)の規定の整備
 

これらにより派遣社員も改正法をフルに活用して不合理な待遇差を解消することができます。

改正派遣法の問題点と課題

今回の改正派遣法は、本来の「同一労働同一賃金」を実現するものではありません。

たとえば、賃金については格差を容認し、「不合理」の判断基準があいまいなままであり、男女の格差是正の視点がとぼしく、違反企業への罰則もありません。

今回の法施行を機に、格差の「抜け穴」を許さない運動を強め、さらに雇用形態や性別などに基づくすべての差別を禁止し、同一労働同一賃金、均等待遇の実現につながる法の制定が求められます。

派遣法は、1995年5月「日経連」の提唱以来、労働者の非正規化が進み、今や全労働者の5人に2人が非正規労働者となっています。

非正規雇用の増加は、正規社員の賃金上昇の抑制やブラック企業の蔓延化にとどまらず、格差と貧困の拡大、中間層の疲弊をもたらし、日本の経済と社会の大問題となっています。「雇用は正規社員が当たり前」と言える社会にしましょう。


【大河】
志村けんさんらの有名人をも死に追いやったコロナウイルスは、感染力や致死率を強めてこれからも、何度も襲ってくるという。いまの世界と日本のあり方では、経済・社会がとても持続できないのではないかと懸念されている。

安倍首相は、感染者数や死者数が、「主要先進国のなかでも圧倒的に少なく抑え込むことができている」と誇らしげに述べた。しかし、日本のPCR検査は世界の中で異常に少なく、実際のところはわからない。それどころか、東京都に象徴されるように、東京オリンピックの延期が正式に決まる3月24日まで、コロナ対策に本気でなかったという疑念もある。

東京では、2月下旬からすでに、例年と比べ肺炎による「超過死亡」(1か月で100人以上)が顕著に表れ、関係者らは気が付いていたはずだ。3月のコロナ死者数は8人との発表だが、実際はその10倍以上だったという指摘も。もし、データを隠蔽し、国民の命よりオリンピック開催や習近平来日を優先したとなれば、大問題であり厳しい検証が必要だ。

コロナ不安を一層激化させたのは、PCR検査と感染者の隔離・保護が不十分なまま、国民一律に補償のない休業・自粛要請をしたことだ。「世界で最も手厚い」支援だというが、国民一律支援ではないので、経済的、肉体的に弱い人たちや医療関係者らは大きなダメージを受け、国民の間に分断を広げた。政府は、これまでの社会保障・医療切り捨ての反省もなく、今後も「3密」を徹底して避けよと100年前の対応を求めている。弱者切り捨てを狙っているのかと将来が末恐ろしくなる。

そのような中、政権の保身を狙った検察庁法案を、今国会での成立断念に追い込んだ。火事場泥棒を許さなかった国民の連帯と民主主義の底力が、ポストコロナとして明るい未来を照らしている。



“賃金は「固定費」なので賃上げはガマンせよ” え! これっていいの?


今年の賃上げは、消費税が10%に増税された中での賃上げとなりました。今年こそはとの期待も空しく、要求額3、000円に対し、昨年よりさらに少なく、増税2%にも見合わない1、000円での妥結となりました。

会社も組合も毎回同じ理由

会社の低額回答の理由は、「固定費の増加」ということです。労組の中央委員より「毎年態度文の内容がほとんど同じである」(春季終結の中央委員会)と言われているように、この20年来、「固定費の増加」を、毎年賃上げを渋る理由としています。組合もこの理由を論破せずに「交渉の限界」として低額回答を了承しています。

しかし、本来の「固定費」である機械や資材の方は、「経営状態が悪いから」「競争に勝てないから」と、物価の高騰分は払えないなどとは言わないはずなのに、人件費の方だけ、賃上げをがまんせよと言うのは理屈に合いません。

会社が賃金は「固定費」だと言うように、この20年間の平均基準賃金を見ると、確かに30万円前後に「固定」され、実質賃金は下がったままになっています。

「人財」は「固定費」か?

川重は従業員を「人財」として大切にすると言っていますが、実際は労働者を「固定費」の機械や資材と同じモノとして考えているのではないかと思ってしまいます。

たとえば、会社は、経営計画の中で、2030年までの利益拡大目標を決めています。しかし、それを実現する肝心の「人財」である従業員の生活を、どう向上させるかのビジョンがありません。

私たちは、日々の生活の糧を得るために、そして今日より明日を豊かにするために働いているわけですから、生活の「固定」ではなく向上させるのが経営者の役割だと思います。

経済学上も賃金は「固定費」ではありません

機械や資材の価値(価格)は生産において、そのまま商品に移行しますが、付加価値を生み出す私たちの労働力の価値としての賃金は、社会の質や力関係等で大いに変動するものです。ここの説明は、次号で述べたいと思います。

賃上げの問題については、昨年の「はぐるま」春季号(NO.239)の「『健康で文化的な生活』を保障する賃上げを」、秋季号(NO.241)の「経営計画から忘れ去られた賃上げ」をも参照してみてください。


新入社員の皆さんへ

入社おめでとうございます。コロナ禍の厳しい状況下ですが、自分らしさを大切にして、この危機をともに乗り越え、希望に満ちた新しい人生の一歩となることを願っています。



読者の広場 
マスク有難う!
西神戸工場で、全従業員に1人20枚ずつ不織布マスクが配布されました。入手困難な中、本当にありがたいです。

一世帯に2枚だけの小さめの布製アベノマスクは、不良品続出で、全量回収し検品のため、配布は先延ばしされました。446億円の税金の無駄使いです。

今は、少しでも感染者を増やさないために、もっと有効な税金の使い方をして下さい!
(カワサキマスク)
コロナに負けるな
西神戸でもリモートワークが適用になりましたが、業務内容によってはなかなかうまくいきませんね。

しかし、この困難を乗越えないと先が無いし、今は我慢の時。

在籍者も少なく開発業務も進めにくいですが、うるさい人がいない日は静かで仕事が進みます。ZOOM、ZOOMと追い掛け回される欠点もありますが、永遠にリモートワークしてくれれば職場環境は大幅改善です。
(リモートワークは大変だ)
新型コロナに負けるな!
兵庫工場では4月7日の緊急事態宣言以降も、感染防止を優先して時差勤務やリモートワークなどの対策を取り、現時点で感染者を出すことなく操業を継続しています。

人類は新型コロナと共存していくしかないとの報道もある。経営幹部の皆さんにはそれに備えた本格的で長期的な対策を打ち出してほしいと思います。

人は苦しい時にこそ人と人とのふれあいを求めるもの、みんなで励まし合い助け合っていきましょう。
(兵庫の応援団)
ペスト
「ペスト」という小説があります。ヨーロッパ人口の3割を奪ったと言われる伝染病に人類が立ち向かった半世紀以上前の話です。見えない敵に勝てた理由は皆の一致団結でした。今我々に必要なことは何か、皆で考えてみてはいかがでしょうか。
(カミュ)
早く安心して働けますように
緊急事態宣言が出て社員の方はどんどんリモートワークに切り替え、仕事も減っていく中でどうなるのか不安に思っていましたが社員と同じように自宅待機となりホットしました。安心して生活して行けるように切に願っています。
(明石・派遣)
新型コロナウィルス対策とボランティア
播磨工場ではコロナ対策として4月9日から現場、事務所共2班体制(A班、B班)となり隔日出勤です。時差出勤で昼休みが12時~12時45分と短くなり、運動時間に制約がありますがガマンです。

上層部の発案でゴールデンウイーク中、希望者はボランティア活動として自宅で医療用のビニールガウン(防護服)を製作しています。材料は会社が支給、ハサミ、定規、油性マジックは自前となっています。出来上がった製品は必要としている病院へ配布されるとのことです。企業の社会的貢献として、良いことをしていると思います。
(播磨・S)
会社の対応にエールを
新型コロナウイルス感染拡大で社長の4月9日のメッセージは従業員を大きく励ましてくださいました。その後の対応では社員も派遣も同様にリモートワークや在宅勤務、3密を避けるための時差勤務などが順次実施され会社の対応には励まされました。
(明石・従業員)
在宅時は庭やベランダで ZOOM会議したり本読んだり、犬の散歩や日頃しない家事手伝い。
休みは自宅フェンス修理とトイレ壁全塗装をした。在宅業務では当然満足にこなせていないが割り切っている。
(明石のおじさんキラー)
コロナウイルスは生活を変えてしまいました。経済的にも精神的にも肉体的にも大打撃です。政府の対応もよくわからないことがあります。これからどうなっていくのかわからないですが、やれることをやっていこうと思います。
(機械くん)

現場に責任転嫁しないで!
緊急事態宣言で、かなりの同僚が在宅になりました。加藤厚労大臣の「コロナ相談に誤解があった」発言を擁護する安倍さん。唖然としました。若い勝武士力士が入院の手遅れで帰らぬ人に。現場に責任転嫁しないで!
(収束心待ちA子)
 
複雑な思いの10万円一律給付
医療崩壊と中小・零細企業、個人事業主、フリーランスの窮状、学生が収入を絶たれ退学を考えていると聞き心が痛む。本当に困っている人、ところへの国としての対応があまりにも遅い、悪いと憤りを感じる。私には差し迫った10万円ではないが一律に給付される。
(明石・悶々とする社員)
 
リモートワークについて
押印のためだけに出社する人がいます。その書類、本当に押印が必要ですか? 電子承認があるならそれで十分では? 防衛省もハンコを減らすそうです。この機会に、本当の働き方改革に取り組みませんか。
(神戸・たこ焼き好き)
 
いつまで続くのか? 新型コロナ禍
新型コロナの影響で、職場ではリモートワークを行なっています。緊急事態宣言が発出されて約1ヶ月になりますが、まだまだ収まりそうにありませんし、外出自粛要請で不自由な生活を余儀なくされています。

このような中で医療の現場や食品・物流関係の現場で日夜働いておられる従事者の方々には、心から感謝するとともに敬意を表します。

今はリモートワークにも慣れてきましたが、職場でお互い顔を見て仕事ができる環境が懐かしく、そんな日が出来る限り早く戻ってくることを願っています。
(神戸 T・K)
 


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